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「占領地併合で中東和平は?」(ここに注目!)

出川 展恒  解説委員

イスラエルのネタニヤフ首相は、占領地であるヨルダン川西岸地区の一部を併合する手続きを、今月から開始すると予告し、パレスチナ側と国際社会から強い反発や懸念の声があがっています。
出川解説委員です。

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Q1:
ヨルダン川西岸地域の併合というのは、どういう意味があるのですか。

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A1:
そもそも崩壊の危機にあったイスラエルとパレスチナの和平交渉にとって、致命的な打撃となります。
ヨルダン川西岸地区は、イスラエルが1967年の第3次中東戦争で占領し、パレスチナ側が、「将来の独立国家の領土」と位置づけています。そして、国際法は、占領地の一方的な併合や入植地の建設を禁止しています。
ところが、ネタニヤフ首相は、ヨルダン川西岸地区のうち、ユダヤ人入植地など、およそ30%の領土をイスラエルに併合する方針を示し、今月から具体的な手続きを始めると予告しています。(地図の濃い緑色の部分が対象地域です。)もし、実際に併合されれば、パレスチナ国家の樹立は、事実上不可能となります。

Q2:
ネタニヤフ首相が、今、あえて併合に踏み切るのはなぜですか。

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A2:
2つ理由があります。1つは、自らの汚職事件で裁判中の身で、政治生命がかかっているからです。ネタニヤフ氏は、国内の右派や極右勢力からの支持を固めようと、先の選挙で、ヨルダン川西岸の入植地などを併合すると公約しました。
もう1つは、盟友であるアメリカのトランプ大統領です。併合計画は、トランプ氏が先に示した“中東和平案”をベースにしたものですが、トランプ氏の再選も怪しくなっています。民主党のバイデン氏は併合に反対していますので、急ぎたいようです。

Q3:
今後、どんな展開が予想されますか。

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A3:
パレスチナ暫定自治政府のアッバス議長は、これまでにイスラエルやアメリカと結んだ合意を破棄すると警告し、パレスチナ住民による激しい抗議行動が起きる可能性があります。
国連のグテーレス事務総長も、「最も深刻な国際法違反であり、和平の可能性を損なう」と述べて、イスラエルに対し、併合の中止を強く求めています。
今のところ、国際社会は反対一色ですが、もし、併合が進められれば、中東の今後を大きく左右するだけに、厳しく監視すべきだと考えます。

(出川 展恒 解説委員)

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