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中国企業締め出し? 米新法案 上院可決

櫻井 玲子  解説委員

アメリカ議会上院は、株式市場に上場している外国企業への規制を厳しくし、上場廃止も可能にする法案を、先週、可決しました。
中国企業の締め出しを狙ったこの動きについて、櫻井解説委員です。

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Q こちらのイラスト、審判が、中国企業の選手に警告を出しているようですね。

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A そうなんです、アメリカ議会が「自分たちのルールに従わないなら、退場してもらうよ」と警告をしているんです。「中国企業がアメリカの投資家の資金を得て事業を展開しているのに、情報開示を十分せず、その経営に、実は中国政府が関与しているのでは?」と警戒しています。
このため、上院では、共和党と民主党議員による超党派の提案により、ニューヨーク証券取引所などに上場している外国企業に対して、
▼アメリカの規制当局の会計検査を受け入れることや、
▼経営に外国政府の関与がないと証明することを求める法案が、全会一致で可決されました。3年連続で条件をクリアできなければ、上場廃止、つまり退場処分にする、としています。
新型コロナウィルスや香港を巡る動きで米中関係が緊迫する中、両国の対立が、金融市場にも持ち込まれた形です。

Q 今後、どんな影響が予想されるのでしょうか。

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A アメリカの株式市場に上場している中国企業は150社以上。
規制が強化されれば、中国企業のアメリカでの資金調達が難しくなることが、予想されます。金融業界からは、規制を厳しくしても、NYを避け、ロンドンや香港で上場する企業が増えるだけ、と反対の声もあがっています。
ただ、政府・トランプ政権もこのところ議会同様、中国に厳しい対応を見せていて、通信機器大手「ファーウェイ」への輸出管理を強化したり、公務員年金基金が中国株へ投資しようとするのを止めたりしています。
今後、法案の審議は下院に移りますが中国への風当たりが弱まる気配はありません。

Q そうなりますと、中国側も、心穏やかではないでしょうね?

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A 中国企業に向かう投資マネーを止めかねない動きだけに、中国の反発は避けられないでしょう。各国が新型コロナウィルスの対応におわれる中、米中両国の対立が一層深まれば、世界経済はさらに冷え込む危険があります。この先の動き、注意深く、みていく必要がありそうです。

(櫻井 玲子 解説委員)


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