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検察庁法改正案~与野党対立深まる

梶原 崇幹  解説委員

検察官の定年延長を可能にする検察庁法の改正案をめぐって、与野党の対立が深まっています。

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Q)検察庁法改正案のポイントは?

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A)▼検察官の定年を、一般の国家公務員と同様に、65歳に段階的に引き上げること、▼内閣や法務大臣が認めれば、最長で3年まで定年延長が可能になることの2点です。検察トップの検事総長も、内閣が認めれば、最長で68歳まで役職にとどまることができるようになります。

Q)改正案をめぐっては、ツイッター上でも著名人が抗議の投稿を寄せるなど、批判は広がりを見せています。
野党側は、改正案のどの点を批判しているんでしょうか。

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A)批判の発端は、政府が、ことし1月31日、東京高検の黒川検事長の定年を延長することを決めたことです。野党側は、「黒川氏は官邸に近く、定年延長は、その黒川氏を検事総長に起用するためではないか」と指摘してきました。
内閣の判断次第で、検察幹部の定年や役職定年を延ばすことができるようになれば、
政府による恣意的な人事が可能になり、検察の独立性が損なわれてしまうと批判しています。
背景には、検察は、制度上は、行政機関の1つで、幹部の任命は内閣が行う仕組みとなっていますが、ときには総理大臣を逮捕・起訴するなど、「準司法機関」と言われて、政治からの距離が求められることから、実際には、人事案は検察側が作成し、それを大臣や内閣が追認することが「慣例」とされてきた事情があります。

Q)一方、政府・与党はどう主張しているんでしょうか。

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A)安倍総理大臣は、改正案と黒川氏の人事は関係ないうえ、検察幹部はこれまでも内閣が任命してきており、政府による恣意的な人事が行われるおそれはないとしています。与党内からは、むしろ、内閣が人事権を持ち、力を持つ検察に民主的なコントロールを及ぼすことが必要だという意見が出ています。
懸念されることは、今回の改正によって検察の独立性に対する国民の信頼がゆらいでしまうことです。
感染拡大への対応が迫られる中で、与野党の対立を懸念する声もあがっています。
政府には、恣意的な人事を避ける、より踏み込んだ説明が求められていると思います。 

(梶原 崇幹 解説委員)


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