WHO=世界保健機関が来週開く年次総会に、台湾がオブザーバーの資格で参加を認められるかどうかに注目が集まっています。髙橋解説委員です。
Q1)
けさのイラストはテレビ会議?
A1)
世界194の国と地域が加盟するWHOは、来週18日から「世界保健総会」と呼ばれる年次会合をテレビ会議の形式で開きます。主な議題はもちろん新型コロナウイルス対策です。台湾は正式な加盟を認められていませんが、「感染対策に空白を作ってはならない」として、オブザーバーの資格で参加を目指しています。ところが、WHOは、台湾の参加は「加盟国が決める問題だ」との理由で、今のところ会合に招待していません。
Q2)
WHOのテドロス事務局長が困り切った表情なのはなぜですか?
A2)
中国が、いわゆる「ひとつの中国」の原則を楯に反対しているからです。現に台湾は、中国との関係が良好だった2009年から8年連続でオブザーバー参加を認められましたが、現在の蔡英文総統が就任した翌年の2017年以降、会合から締め出されてきました。
そんな現状を今こそ見直して、テドロス事務局長が台湾を招待するよう求めているのが、アメリカのトランプ大統領です。トランプ大統領は「今のWHOはあまりに中国寄りだ」として、資金拠出の凍結を表明するなど、圧力を強めています。日本も台湾のオブザーバー参加を支持する立場です。ただ、加盟国の過半数から支持を得られるかどうか、まだわかりません。
Q3)
どうしてですか?
A3)
一部の国々は中国の意向を忖度し、あるいは対立や嫌がらせを恐れているのかも知れません。しかし、この会合で台湾に発言の場があれば、国際社会はその知見から学ぶ貴重な機会を得るでしょう。台湾は中国・武漢で感染者が見つかって以来いち早く対策を徹底し、被害や影響を比較的軽微なものにくい止めているからです。
そもそもWHOは、人種や宗教、政治信条などで差別されることなく、「すべての人々の健康増進」を目的に設立された組織です。政治的な駆け引きよりも人命と安全を最優先に、台湾を排除しないよう求めたいと思います。
(髙橋 祐介 解説委員)
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