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新型コロナウィルス 相次ぐ輸出制限に懸念

櫻井 玲子  解説委員

新型コロナウィルスの感染が世界中に拡大する中、各国が、医療物資や食料の輸出を制限する動きが相次ぎ、その影響が懸念されています。櫻井解説委員です。

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Q こちらのイラスト、医療物資や食料をそれぞれが自分のところで大切そうに抱え込んでいますね。

A はい。WTO・世界貿易機関の最新の調査によりますと、80の国や地域が、新型コロナウィルスの感染拡大に関連する輸出の禁止や制限を行っているということです。例えばマスクについては73、食品については17の国と地域で規制をかける動きがみられます。
どの国も危機対応におわれる中、まずは自分の国の需要を優先し、大事な資源を手元に確保しておきたい考えです。
問題は、「国内需要を満たすのに必要な量」以上に、過剰な輸出制限をしたり、長い間、続けたりする場合です。
輸入品に頼る、ほかの国々に、深刻な影響が出る恐れがあるとWTOは警告しています。

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Q 日本への影響は、大丈夫でしょうか?

A まず、食料については、在庫も十分にあり、今のところ、主な輸入先からの滞りも見られていないということです。ただ、それ以外のものについては、輸出制限による「直接的な影響」かどうか、は別として、大丈夫だ、とは言いきれないんです。
というのも、各国が次々に輸出を規制することで、医療物資などの争奪戦に拍車がかかり、品物不足や価格の高騰といった形で、消費者にも影響が及んでいるわけです。
今後は、窮地に陥った国が、報復のために別の輸出制限をする、といった悪い連鎖を招く心配、もあります。

Q 深刻な影響を避けるにはどうすればよいのでしょうか?

A 日本やカナダなど42の国と地域は今週(5月5日)、共同声明を発表し、輸出制限をする国に対し、「的を絞った一時的な規制」にとどめるようけん制しました。
またG20・主要20か国の農相会合も、「各国が不当な輸出制限を避ける」努力をするという共同声明を採択しています。

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実際、一部の国では、制限を緩和したり、解除したりする動きも、出ています。
こういう危機のときだからこそ各国が協力するよう、働きかけを強めることが大事です。
また、海外からの輸入に大きく頼る国は必要な物資をどう確保するかも、あらためて問われています。日本も、これまで以上に、国内生産の強化や、調達先の多様化が求められることになるのではないでしょうか。

(櫻井 玲子 解説委員)


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