宗教行事が新型コロナウイルスの感染を拡大させているのではないかと指摘される中、世界のイスラム教徒にとって重要な「ラマダン」(断食の月)が、23日にも始まります。出川解説委員です。
Q1:
宗教行事が感染拡大にどう結びつくのでしょうか。
A1:
イスラム教だけでなく、すべての宗教に共通する問題です。大勢の信者が1か所に集まって祈りを捧げる集団礼拝などが、いわゆる「3密」の状態をつくり、感染を拡げていると専門家は指摘しています。
ラマダンは、預言者ムハンマドが、神の教えを授かった神聖な月とされ、イスラム教徒は、日の出から日没まで、一切の飲食を絶って神に祈る義務があります。 モスクでの集団礼拝に加えて、日没後は、親族や仲間が集まって、夜遅くまでにぎやかに会食するほか、ラマダン明けには、日本のお正月のような祝日が続きます。信仰や連帯感を深める行動が、感染拡大を招いてしまうのです。
Q2:
各国は、どう対応しようとしているのですか。
A2:
たとえば、エジプト政府は、ラマダンの間、集団礼拝を禁止すると発表し、マレーシアやインドネシアの政府は、国民に対し、モスクには行かず、自宅でお祈りしてほしいと呼びかけました。
これに対し、熱心な信者からは不満や反発の声もあがり、 パキスタンでは、宗教指導者らが政府による規制の解除を求めました。
Q3:
感染拡大を防ぐ手立てはあるでしょうか。
A3:
熱心な信者は、モスクでの礼拝などは、「宗教的な義務」であるとともに、コロナウイルスが広がる中、心の安らぎを得るうえで欠かせないと考えますので、 政府の力で止めさせるのには限界があります。
先週、サウジアラビアのイスラム教の最高指導者が、「ラマダンでの祈りや食事は、自宅で行うべきだ。自らの命を守る行動こそが神の教えに沿うものだ」というメッセージを出しました。このような、有力な宗教指導者による呼びかけは非常に有効です。
世界の人口の4分の1を占めるイスラム教徒の間で感染が拡がれば、壊滅的な事態となるだけに、宗教指導者の協力が重要な決め手になると思います。
(出川 展恒 解説委員)
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