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「4度目の再審請求『大崎事件』」(ここに注目!)

清永 聡  解説委員

41年前、鹿児島県大崎町で男性の遺体が見つかり、殺人の罪で服役した女性が一貫して無実を主張し、再審=裁判のやり直しを求めている「大崎事件」。30日に4回目の再審請求が行われます。

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Q:弁護団が怒っています。

A:怒っているのは最高裁に対してです。この事件、前回、地方裁判所も高等裁判所も原口アヤ子さんという女性の再審を認めたのですが、最高裁判所第1小法廷の小池裕裁判長が去年、これをいずれも取り消し、再審を認めない“逆転決定”をしたからです。

Q:どうして取り消されたんですか。

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A:遺体で見つかった男性はアヤ子さんの義理の弟でした。前回高裁は、弁護団が専門家に依頼した遺体の鑑定結果などを元に、男性が殺されたのではなく、事故だった可能性があると判断して再審を認めました。
ところが最高裁は、これを「証拠としては証明力に限界があり不十分」と判断したのです。
地裁と高裁の両方が認めた再審を、最高裁が取り消したのは初めてです。
しかも小池裁判長は、最高裁としては普段行われない鑑定の内容などに踏み込んだ上、結果として「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則と正反対になる判断をしました。
この最高裁決定に対しては、刑事法学者などから批判の声も上がっています。

Q:このため今回、4回目の再審を申し立てるわけですね。

A:弁護団は午前中、鹿児島地裁に再審請求を行い、新たな鑑定結果などを提出して、改めて無罪を証明したいとしています。
ただ、弁護団や支援者には心配なこともあると言います。

Q:それは何でしょうか。

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A:アヤ子さんの健康です。現在92歳。30年前に刑を終え、現在は病院に入院していて、十分に言葉を話すことができません。弁護団は「年齢を考えればこれが最後の機会になるかもしれない」として早く結論を得たい考えです。「裁判所は本人の健康状態を考慮してできるだけ速やかに判断を示すことが求められる」と指摘されています。
これから早い審理が望まれるという点でも、今回は「異例の再審請求」と言えそうです。

(清永 聡 解説委員)

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