NHK 解説委員室

これまでの解説記事

「新型コロナウイルス『米中同舟』は!?」(ここに注目!)

髙橋 祐介  解説委員

新型コロナウイルスの感染が世界に拡大する中で、米中両国は互いに非難を強めています。髙橋解説委員です。

C200324_0.jpg

Q1)
けさのイラストは嵐で船が大揺れ?
A1)
感染の拡大阻止に奔走する世界の首脳たち。アメリカABCテレビの先週末の世論調査では、トランプ大統領による新型コロナウイルスへの対応を支持する意見は55%と、前の週までとは一転して過半数に達しています。みずからを“戦時の大統領”として国民の結束を最優先に呼びかけているからでしょう。ただ「コロナウイルス」を敢えて「中国ウイルス」と書き直し、中国批判のボルテージも上げています。中国共産党が当初の正確な情報を隠蔽したせいで、アメリカも世界も多大な代価を支払わされていると言うのです。

C200324_5.jpg

Q2)
なぜ今、トランプ大統領はあらためて中国批判を強めている?
A2)
直接のきっかけは、中国政府から、対応を自画自賛するばかりか、「ウイルスは米軍が持ち込んだのかも知れない」「欧米の対応こそ生ぬるい」そんな責任転嫁とも受け取れる発言が相次いだからだとしています。ただでさえ貿易摩擦で険悪だったアメリカ国民の対中感情も、かつてなく悪化しています。現に、ギャラップ社の世論調査では、いまの中国を好ましくないと見るアメリカ国民は67%と、両国の国交樹立以来、最悪の状態です。このまま双方の応酬がエスカレートすれば、米中対立の再燃で、船は沈没の危機を免れないかも知れません。

C200324_7.jpg

Q3)
では、米中関係のさらなる悪化に歯止めはかけられる?
A3)
普段は反目する二つの国の国民が、同じ船に乗り合わせ、共通の危機に向き合うとき、おのずと互いに協力して難局は乗り切れる。そんな中国の故事は「呉越同舟」と言われます。現代の共通の危機とは、国境を越えたウイルスとの戦いです。世界経済を早期に復興させるためにも、米中の協力は欠かせません。はたして“呉越”の文字を“米中”に書き直すことはできるのか?同じ船に乗る日本と世界の注目が集まります。

(髙橋 祐介 解説委員)


この委員の記事一覧はこちら

髙橋 祐介  解説委員

こちらもオススメ!