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「苦境の中小企業 間に合うか年度末の資金繰り」(ここに注目!)

神子田 章博  解説委員

新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、サービス産業を中心に中小企業の資金繰りが悪化しています。

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Q バケツリレーでお金を運んでいるようですが、急を要しているんですね?
A はい。とりわけ観光や飲食業は深刻です。先月の海外からの旅行者の数は去年の4割程度に落ち込み、今月はさらに減る見通しです。宿泊やバス会社、レジャー施設などの観光関連。それに宴会の自粛の影響を受ける飲食といった業種では、売り上げの大半を失ったという企業が無数に出ています。規模の小さい中小企業では、手元の資金が尽きてしまい、取引先への支払いや融資の返済などが困難な状況になっています。

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Q 政府はどう対応しているんでしょうか?
A 売り上げが一定以上減った企業を対象に、政府系の金融機関を通じて、実質的に利子をとらずに融資をするとか、各地の信用保証協会が、企業がお金を返せなくなった時に返済を肩代わりする=いわゆる債務保証を行うことで、銀行などが経営の悪化した企業に対しても融資をしやすくする仕組みが導入されました。そして、こちら最後の貸し手といわれる日銀も、売り上げが落ち込んだ企業に融資を行う民間の金融機関に対し、必要になった資金を金利ゼロ%で貸し出す異例の政策に踏み切りました。

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Q 二重三重の後方支援が敷かれているようですね
A はい。ただ問題は、様々な支払いの期限を迎える年度末に間に合うかどうかです。企業からの相談は全国で8万件近くにのぼり、新たな融資に必要な手続きが煩雑で時間がかかるという声も聞かれます。あまりに数が多いためギリギリの状況なんです。このため政府系金融機関では、審査で提出する書類を減らしたり、4月の人事異動を遅らせたり元職員を投入したりして、窓口の体制を強化しています。観光などサービス産業は、将来外国人の旅行客が復活した際の受け皿となって日本経済を成長させてゆくための重要なインフラ的存在です。一時的なコロナ対策によってこうした企業と人材が失われることのないよう、金融機関の側も年度末に期限がくる融資の返済を猶予するなど柔軟な対応をしてほしいと思います。

(神子田 章博 解説委員)


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神子田 章博  解説委員

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