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「海保最大の巡視船 巨大タンカーと綱引き!?」(ここに注目!)

津屋 尚  解説委員

海上保安庁最大の巡視船と巨大なタンカーをロープにつないで引っ張るというユニークな訓練が13日、神奈川県沖の相模湾で行われます。津屋解説委員です。

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Q1:巡視船とタンカーがなぜ綱引きのようなことをするんですか?

A1:実はこれ、巨大タンカーが航行不能に陥って漂流する事態に備えた曳航訓練なんです。こちらの「あきつしま」(6500トン)は、海上保安庁最大の巡視船ですが、タンカーの方はこれよりもはるかに大きく(16万トン)、全長は東京タワーとほぼ同じです。船そのものの重さに加えて、強い風や水の抵抗も極めて大きいので、引っぱるのは容易ではありません。巨大タンカーが漂流を続けて座礁すれば、大量の油が流出、最悪の場合、引火してあたりは「火の海」になり、海上交通がストップしてしまう恐れがあります。日本は貿易の99%以上を海上輸送に頼っていますから影響は計り知れません。

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Q2:最悪の事態ってそんなにあるものですか?

A2:実はおととし(2018年8月)、海上交通が最も過密な東京湾のすぐ近くで、原油を満載した超巨大タンカーがエンジン故障で航行不能に陥る緊急事態があったんです。しかも台風が迫っているさなかでした。巡視船や小型のタグボートが派遣されたんですが、歯が立ちませんでした。このときは幸い、国内で最も引く力が強い民間の大型タグ船が駆けつけて、安全な海域に避難させることができましたが、同じ能力の船は国内ではこの一隻だけ。普段は他の仕事を抱えているので、緊急時に必ず現場に急行できるというわけではありません。「もし到着が遅れていれば、空前の海上災害になっていた」と関係者は口々に話しています。

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Q3:初めての訓練とのことですが海保最大の巡視船でタンカーは引けそうですか?

A3:安全な場所まで長い距離を引っ張っていくのは、難しいと思います。でも、タンカーが漂流し続けるのを食い止めるだけならできる可能性があります。大型タグ船の到着など、次なる手を打つまでの時間を稼げるか、その点を確認する訓練になりそうです。海上交通が生命線の日本。万全とは言えない部分の備えを少しずつでも強化していけるかが課題です。

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(津屋 尚 解説委員)

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