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「デジタル課税 大枠合意はしたけれど」(ここに注目!)

櫻井 玲子  解説委員

インターネットを使って国境を越えたビジネスを展開する巨大企業が増える中、130以上の国や地域が「デジタル課税」と呼ばれる新しいルールについて、大枠合意に達しました。今後の課題について、櫻井解説委員です。

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Q1 こちらのイラスト、デジタル課税という船に各国の代表が乗り込んでいますね。
どこへ向かおうとしているのでしょうか?

A1 「グーグルやアマゾンといった巨大IT企業は、普通の企業の半分も税金を納めていない」そんな批判も聞かれる中、法人税を公平に払ってもらうための国際ルールを決めようとしているんです。去年日本で開かれたG20でも、議論されました。

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その結果、まず「企業は工場や支店を置いていなければ、その国に法人税を納めなくてもよい」というルールを変え、「拠点がなくても課税はできる」ことで合意しました。
ネットを通じ、海外で売り上げや利益をあげているのに、物理的な拠点はないからと、その国に法人税を納めていない企業が多いからです。
ここまで合意できたことは、一定の評価ができますが、大変なのは、この先です。

Q2 どういうことですか?

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A2 どの会社が課税対象になるか、具体的なところは、これから議論します。
今回決まったのは、海外で、消費者向けのオンラインビジネスや、企業向けのデータ管理ビジネスを展開する、大企業に限る、というところまで。
どのくらいの売り上げや利益を出している企業に課税するかも、決まっていません。
巨大IT企業を多く抱えるアメリカと、それ以外の国との対立も厳しくなりそうで、早くもその火種が生じているんです。

Q3 どんな火種ですか?

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A3 アメリカがここにきて「新しいルールを受け入れるかはそれぞれの企業の判断に任せよう」と提案してきたんです。
せっかくの合意も骨抜きになるのではと、懸念の声、真意を訝る声、もあがっています。
一方、フランスやイギリスは国際ルールがまとまるまでは、それぞれ独自のデジタル税を採用したい方針です。
協議が漂流すれば、各国がまちまちに課税を行う動きが広がり、海外ビジネスを展開する日本企業がバラバラな税制に悩まされることも予想されます。
年内を目指す最終合意に向け、確実に歩みをすすめることができるか、注目していきたいと思います。

(櫻井 玲子 解説委員)


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