イランの核合意について、フランス、ドイツ、イギリスの3か国が、国連の制裁の再開につながる手続きに踏み切り、合意の維持が危ぶまれています。出川解説委員です。
Q1:
大きなろうそくが立っていますが、何なのでしょうか。
A1:
「イラン核合意」の希望の炎が、アメリカ・トランプ政権の一方的な離脱と独自制裁で、「風前の灯」となっています。
イランのロウハニ大統領は、対抗措置として、今月5日、「今後は、核合意で定められた制限に縛られず、ウラン濃縮活動を進める」と発表しました。
これについて、フランス、ドイツ、イギリスの3か国は、「イランによる重大な合意違反」だとして、14日、核合意で定められた「紛争解決の手続き」を発動させました。
Q2:
どういう手続きですか。
A2:
まず、核合意の当事国でつくる「合同委員会」を開き、続いて、「外相級の協議」で、問題解決を図ります。それらが不調に終わった場合には、「国連安全保障理事会」に付託され、採決を経て、核合意の成立前にあった国連の制裁がすべて復活し、核合意は、事実上崩壊します。
Q3:
核合意の維持は難しいのでしょうか。
A3:
そう言わざるを得ません。これまでイランの立場に理解を示してきたヨーロッパの3か国が厳しい姿勢に転じたからです。今後の協議で、イラン側が、先の対抗措置を撤回するか、大幅に修正しない限り、核合意の維持は極めて困難ですが、まだ「希望の炎」が消えたわけではありません。
Q4:
どういうことですか。
A4:
フランス、ドイツ、イギリスの3か国は、「紛争解決の手続き」に踏み切ったのは、イランに圧力をかけることで、核合意を守らせて、維持するのが目的だと強調しています。
一方、ロウハニ大統領も、対抗措置を打ち出しながらも、核合意を維持したい考えを繰り返し表明しています。つまり、双方とも、本音では、核合意の存続を強く願っているのです。
協議や採決に至る手続きを双方が意図的に引き延ばしてゆくことも予想されます。11月のアメリカ大統領選挙の結果しだいでは、局面は大きく変わりますが、それまで、核合意を維持できるかどうか、双方の知恵と忍耐にかかっています。
(出川 展恒 解説委員)
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