中東情勢がガソリンの価格に及ぼす影響が懸念されています。
Q やはりガソリン価格は値上がりしているんでしょうか?
A はい。今年に入ってイランとアメリカの軍事的な緊張が高まり、中東情勢が緊迫化したことを受けて原油価格が一時高騰しました。その影響で先週発表されたレギュラーガソリンの小売価格は、1リットル当たり151.1円と、おととし12月以来の高い水準となり、きょう発表される今週の価格も値上がりしそうです。しかし現在原油価格の動きは落ち着いてきていまして、ガソリンの価格が一本調子で上がっていくということでもないかもしれません。
Q 原油価格が落ち着いてきているのはなぜですか?
A トランプ大統領が、イランへの反撃を当面控える意向を表明するなど、双方が自制する構えを示していることに加え、世界的な原油の需給の構図が変わってきていることがあります。
アメリカではシェールオイルの開発が進み輸出国になる勢いとなっているなど中東以外の産油国での油田の開発が進み、原油の供給が大幅に増えています。その一方で、OPEC=石油輸出国機構は、原油価格を維持するために、供給の量を意図的に抑えている状況で、必要となれば今後供給を増やす余力もあります。一方需要ですが、世界経済の減速への懸念や、環境への影響を配慮した石油離れの動きなどから、弱含みとなっていまして、原油価格は値上がりしにくい状況になっているのです。
Q とはいっても日本は中東から多くの原油を輸入していますから、心配な面はありますよね?
A おっしゃる通りです。トランプ大統領が、中東へのアメリカ軍の増派や、イランに対する追加の経済制裁を実施する考えを表明したこともあり、イランの周辺国で活動するイスラム教シーア派の武装組織が軍事行動を起こし再び中東地域の緊張が高まる可能性も残っています。日本は原油の9割近くを中東から輸入していますが、戦火が石油関連施設に及び、原油の供給が滞るようなことになれば、私たちが使うガソリンや灯油の価格にもはねかえってくるだけに、今後もイランをめぐる動きに注目したいと思います。
(神子田 章博 解説委員)
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