各国の金融市場は、国際情勢の変化も背景に、年明けから緊張感漂うスタートとなっています。今後の展望について櫻井解説委員です。
Q1 ことしの世界経済、どうなりそうでしょうか?
A1 はい、2020年は世界全体で3パーセント前後の、緩やかな成長にとどまり、先行きが見えにくい一年となりそうです。そこでことしの干支、ねずみにちなんだ3つの「チュー目点」(注目点)を選んでみました。
Q2 「チュー目」点。一つ目のキーワードは?
A2 はい。まずは「中東」です。アメリカとイランの報復合戦がエスカレートする懸念から原油が高値に傾いています。これまで原油価格を抑える一因だったアメリカのシェールオイルへの投資がこのところ減っていることもあり、警戒が必要だ、という指摘もあります。
さらに、リスクを避けるためにと、日本円が買われ、円高が一気にすすめば、日本企業の大きな足かせになるおそれがあります。
Q3 日本経済への影響は、特に、心配ですね。二点目はなんでしょう?
A3 「中国」です。去年はアメリカとの貿易摩擦が連日伝えられましたが、ことしは、中国経済そのもの、特にその企業や一般家庭が抱える債務・借金の大きさにも、改めて、注目が集まりそうです。債務の総額はこの10年で4倍に膨らんでいます。
地方銀行の経営不安も広がっていて、次の金融危機の火種になるのではと懸念されています。
Q4 そして三つ目の注目点は?
A4 「中央銀行の限界」です。東京やニューヨーク市場では去年一年で、20パーセント前後も株価が上昇しましたが、その裏では、日銀をはじめ、世界中の中央銀行が景気を支えるための金融緩和、つまり、おカネが市中にふんだんに出回るような政策を続けてきました。ただ、日本やヨーロッパはすでに、マイナス金利政策をとっていて、この先、景気が悪くなっても、金利をさらに引き下げるのは難しい。中央銀行が打つ手は限られていることは念頭に置いておく必要があります。
ちなみに、ことしは60年に一度の「庚子(かのえね)」で、新たな芽吹きと繁栄をあらわす年ともいわれます。
新しい時代に向けて今、どのような種を蒔くことができるのかが、問われている、と思います。
(櫻井 玲子 解説委員)
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