アメリカのトランプ大統領のウクライナ疑惑で、年明け早々にも予想された弾劾裁判は、依然いつ始まるかメドが立っていません。髙橋解説委員です。
Q1)
けさのイラストはトランプ大統領が樽に剣を刺すあのゲーム?
A1)
ハラハラ、ドキドキ、再選めざして危機一髪。トランプ人形が飛び出たらゲーム・オーバーです。大統領は共和党が多数を占める議会上院で無罪を勝ち取ろうと準備に余念がありません。ところが、民主党のペロシ下院議長は、先月下院で可決した大統領の弾劾訴追決議を実はまだ上院に送っていません。証人喚問など、審理の進め方をめぐり、与野党の主張が折り合わないからです。しかも、そんな微妙な時期に大統領が決断した一手が事態をいっそう複雑にしています。
Q2)
どんな一手?
A2)
宿敵イランの革命防衛隊の司令官を殺害した軍事作戦です。イランは「必ず報復する」と猛反発。中東情勢は一気に緊迫しています。トランプ大統領は「戦争を始めるために行動を起こしたのではなく、戦争を防ぐための自衛措置だった」としています。ただ、アメリカは去年4月、革命防衛隊を外国政府の軍事組織として初めて「テロ組織」に指定していますから、その中心人物の殺害は、事前にかなり計画を練って周到に準備された可能性も排除できません。こうした緊張の高まりで、民主党の大統領候補選びにも、実は予期せぬ影響が出てくるかも知れません。
Q3)
どんな影響ですか?
A3)
目下のところ支持率でトップを走るバイデン前副大統領に対する再評価です。議会上院で外交委員長も務めたバイデン氏は、今回の軍事作戦について「信じられないほど危険で無責任だ」と真っ向から批判しています。弾劾裁判を控えた大統領が熟慮を欠き、得点稼ぎに走ったことで、アメリカを危険にさらしたと言うのです。トランプ政権で安全保障問題を担当したボルトン前大統領補佐官も、議会上院から召喚状が出されたら、証言に応じる意向を明らかにしました。弾劾裁判の開始を前に、与野党の攻防は今後ますます激しくなりそうです。
(髙橋 祐介 解説委員)
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