IR・統合型リゾート施設などを担当する内閣府の副大臣を務めた秋元司衆議院議員が、中国企業から現金300万円などの賄賂を受け取っていたとして、25日、東京地検特捜部に収賄の疑いで逮捕されました。事件の背景と今後の焦点を解説します。
Q:IRの沼でたくさんの人が釣りをしています。
A:これはカジノを含むIR・統合型リゾートの誘致を検討などしている全国の自治体です。9月までに観光庁が行った調査に対し、8つの地域の自治体が整備計画の申請を「予定」あるいは「検討」と回答していました。
ただし、施設整備の区域は当面3つまでです。3か所にIRが作られた場合、その経済波及効果は施設の建設で5兆円あまり、運営で年間およそ2兆円という民間のシンクタンクの試算もあります。まさに巨額事業で、誘致を目指す自治体は準備を進めています。
Q:自治体の様子を海外の企業が見ています。
A:海外でカジノなどを運営する企業は、これをビジネスチャンスと見ています。すでにアメリカなど複数の企業が自治体向けの提案を行ったり、計画を表明したりしています。
つまり、これは自治体の間の競争だけでなく、その後ろでは海外企業によるそれぞれの自治体への売り込みも活発に展開されているんです。
Q:その中で明らかになったのが、今回の汚職事件ですね。
A:秋元議員は、中国企業の「500ドットコム」側から現金300万円などの賄賂を受け取ったなどとして、25日に収賄の疑いで東京地検特捜部に逮捕されました。
一方、この中国企業は去年1月、北海道留寿都村でリゾート施設を運営する観光会社に投資を検討していることを表明していました。さらに去年4月には、国土交通省の副大臣室で、議員と中国企業それに村の関係者が面会したということです。
ただ、北海道は先月、知事が再来年までの申請を断念する意向を表明し、参入計画は頓挫する形になっていました。
また、秋元議員は「企業側から陳情を受けたり、便宜を図ったりしたことは一切ない」などと説明し、不正への関与を強く否定しています。
Q:今後の焦点はどのような点でしょう。
A:中国企業側が具体的にどのような便宜を図ってもらおうとしていたのかは明らかになっておらず、その詳しい経緯の解明が焦点です。
また、IRは政府の成長戦略の1つに位置付けられています。さらに自治体は再来年の申請に向けてこれから準備が本格化します。
極めて大規模で巨額な事業だけに、この事件を機に、不正が起きることのないよう、政府や自治体には今後、一層の厳格さが望まれます。
(清永 聡 解説委員)
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