離婚後に子どもを育てる親が受け取る養育費。その基準となる「算定表」が16年ぶりに見直されました。養育費はどのように変わり、今後はどのような課題があるのでしょうか。
Q:お母さんと子供を、窓の外からサンタクロースが覗いています。“養育費”と書かれた箱を持っています。
A:この養育費は親の収入に応じた「算定表」と呼ばれる表を参考にしています。
例えば14歳までの子ども1人を育てている場合、受け取る側(権利者)の年収が250万円、支払う側(義務者)の年収が500万円だと、従来の算定表は養育費が月2万円から4万円の間でした。今回、最高裁が16年ぶりに見直した算定表では、これが4万円から6万円に増えます。
これは通信費など、子供にかかる費用が増えたことなどが理由です。今後の離婚調停などで参考にされるもので、金額は個別に検討されます。
Q:すでに養育費を取り決めている人には関係ないのでしょうか。
A:いえ、そういう人にも関係する点があります。
例えば、2022年から成年年齢が18歳に引き下げられます。このため「18歳はもう大人だから」という理由で養育費が打ち切られるのでは、という不安の声がありました。これについて今回、算定表とともにまとめられた報告書の中で「一律に18歳で養育費を終える事情は認められない」と明記されました。これは大事な指摘だと思います。
Q:進学などでむしろお金がかかる時期ですからね。
A:ところがもう1つ課題があります。今回、一例として示している母子家庭の場合、国の調査で「現在も養育費を受け取っている」と答えたのは、4人のうち1人という割合です。中には泣き寝入りする人も少なくないとみられます。
Q:受け取っていない人が多いんですね。
A:国立国会図書館によると、海外では給料から養育費を天引きする制度や、支払わない相手には運転免許を停止するといった制度もあるということです。今後は、子供がもれなく養育費を受け取ることができる仕組みを整えることが求められます。
ひとり親家庭の貧困は社会の課題になっているだけに、制度の充実を望みたいと思います。
(清永 聡 解説委員)
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