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「難民支援 負担と責任の分担」(ここに注目!)

二村 伸  解説委員

戦後最悪の状況に置かれている世界の難民に対してどのように支援を進めていくか具体策を議論する初めての閣僚級会合がスイスのジュネーブで始まりました。二村解説委員です。

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Q.どんな会合なのですか?

国際機関と政府、企業、NGO、難民などすべての当事者が一堂に会して議論を交わす初めての会合「グローバル難民フォーラム」が17日から2日間にわたって開かれています。国連のグテーレス事務総長や多数のシリア難民を抱えるトルコのエルドアン大統領をはじめ企業のトップも多数出席し、日本からは衣料品チェーンで100人以上の難民を雇用しているファーストリテイリングの柳井正社長もビデオで参加します。
世界では7000万人をこえる人たちが、弾圧や迫害などによって住む家を追われていますが、欧米では難民受け入れに反対する声が高まり、難民たちが置かれている状況は悪化し続けています。また難民の8割は、周辺の途上国にとどまり続けているため、受け入れる側の負担も重くなっています。そこで国連は各国が負担と責任を分かち合うよう求め、4年に1度閣僚級の会合を開いて具体的な支援策を議論することになったのです。

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Q.具体的にはどのような支援が必要なのですか?

住む場所や水、食料などといった緊急援助だけでなく、教育や雇用など難民の自立を支えていく中長期的な支援が重要です。それには国やNGOだけでなく、企業や市民も含め社会全体で取り組んでいくことが求められます。物資だけでなく教育や職業訓練の機会の提供を申し出る企業も増えています。

Q.日本は何ができるのでしょうか?

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日本は、現地での支援活動以外に、国内ではシリア人留学生を5年間で150人受け入れているほか、第三国定住制度による難民の受け入れを来年度から倍増させる計画です。グローバル難民フォーラムでは18日にこうした日本の取り組みについて鈴木外務副大臣が説明します。また、来年の東京オリンピック・パラリンピックには難民選手団が参加し、政府は難民問題への理解を深める絶好の機会ととらえています。他の先進国に比べて難民の受け入れが極端に少なく閉鎖的と言われてきた日本が変わるのか、国だけでなく市民一人一人が問われていると思います。

(二村 伸 解説委員)


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