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「ロボコンで『廃炉』に挑む」(ここに注目!)

土屋 敏之  解説委員

▼あすから福島県で原発の廃炉をテーマにしたロボットの大会が開かれる

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 これは、「廃炉創造ロボコン」という高等専門学校の学生たちの競技会です。ロボコンと言えばNHKのロボットコンテストがありますが、それとは別でこちらは文部科学省などが主催して今年で4回目。18チームが参加します。元々は福島第一原発の事故後、地元福島高専の先生たちが廃炉に貢献できないかと全国の高専に呼びかけ、人材育成などを目的に始まったものです。

▼どんな競技が行われる?

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 今回は燃料デブリの調査と回収を想定した内容です。福島第一原発では、原子炉の下に落ちた燃料デブリの調査など実際に多くのロボットが投入されてきました。この現場の実物大の模型を日本原子力研究開発機構が技術開発や教育のために作っており、それをこの競技にも使います。
 学生は原子炉の外側にあたる場所からロボットをスタートさせ、配管を通して踊り場から下に落ちているボールなどを10分以内に回収してくる競技ですが、原発内の作業に見立てた厳しい条件があります。例えば内部には人は入れないということで、現場やロボットを直接見ることはできず、ロボットのカメラの映像だけで操縦しなくてはなりません。また電波が通じないということで、ケーブルを引っ張っていく必要があります。

▼活躍したロボットを廃炉に?

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 いいえ。高専生のロボット技術が直接すぐに廃炉に役立てられるというわけではありません。ただ、これまでの出場者では、その後廃炉に関わる組織に就職した学生もいたり、多くの学生が「廃炉への関心が高まった」とも言います。
 福島第一原発の廃炉方針を策定する国の対策チームは今月、新たな案をまとめましたが、廃炉の完了は2041年から51年とする方針を維持していますので、今の学生たちはまさに中心となる世代です。廃炉への長い道のりを次の世代にバトンを受けついでもらう必要があるのも事実ですし、だからこそこのロボコンを通じて、高専生だけでなく社会全体であらためて考えるきっかけになればと思います。

(土屋 敏之 解説委員)


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土屋 敏之  解説委員

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