NHK 解説委員室

これまでの解説記事

「イギリス総選挙 離脱の行方は」(ここに注目!)

二村 伸  解説委員

1月末のEU離脱か、それとも国民投票のやり直しか、イギリスの将来を決める総選挙の投票が12日に行われます。二村解説委員です。

C191212_0.jpg

Q.与党・保守党の優勢が伝えられていますね。

10日発表された世論調査では、与党・保守党が最大野党の労働党に9ポイントの差をつけています。ただ、10ポイント以上あった差は1桁まで縮まっています。保守党にとっては第1党になるだけでは勝利ではありません。来月末のEU離脱を実現させるために過半数を制することができるかどうかが勝敗の分かれ目です。

C191212_3.jpg

Q.過半数を制することはできるのでしょうか?

調査機関が支持率をもとに計算した予想獲得議席は、保守党が339議席で過半数を制する見通しです。ただ、接戦の選挙区が多く予断を許しません。保守党は最大で367議席、少ない場合は311議席にとどまり、大勝する可能性もあれば過半数割れになる可能性もあります。さらにジョンソン首相自身も選挙区で苦戦を強いられています。

Q.首相の選挙区ですか?

ロンドン西部の首相の選挙区では、25歳のイラン出身の労働党候補と接戦となっています。前代未聞の事態も起きかねないと現地のメディアも注目しています。

C191212_5.jpg

Q.野党が政権を奪還する可能性はないのですか。

難しそうです。EU残留を望む人が多いにもかかわらず労働党が劣勢に立たされているのは、残留か離脱かを党として鮮明に打ち出せないからです。離脱派が多い選挙区の議員もいるためで、とりあえず国民投票を行ってから決めるというあいまいな戦術が裏目に出ています。また、法人税の引き上げや、鉄道・通信などの基幹産業の国有化といった公約も不人気で、保守党が優勢なのは「野党よりましだ」と考える人が多いことも原因のようです。

C191212_6.jpg

Q.そうなるとEUからの離脱の可能性が高そうですね。

世論調査どおり保守党の多数派政権ができれば、来月末にEU離脱が実現する可能性が高いのですが、選挙前と同じ少数政権だと再び議会の抵抗にあい、混乱が生じかねません。合意なき離脱の可能性も消えていません。離脱を決めてすでに3年半、今度こそ決着なるか、イギリスの将来を決める選挙をEU各国も慎重に見守っています。

(二村 伸 解説委員)


この委員の記事一覧はこちら

二村 伸  解説委員

キーワード

こちらもオススメ!