サウジアラビアの国営石油会社「サウジアラムコ」が、きょう、国内の証券取引所で、新たに株式公開されます。これによって調達する資金は史上最高額となります。出川解説委員です。
Q1:
サウジアラビアが、国営石油会社の株式公開に踏み切った狙いは何ですか。
A1:
「サウジアラムコ」の株式公開は、サウジアラビアの若き指導者、ムハンマド皇太子の肝いりで進められました。その狙いは、株式上場で得られる資金、日本円で2兆7000億円を、自らが進める経済改革「ビジョン2030」、つまり、石油に頼り切った経済から脱却し、産業の多角化を図り、若者の雇用の場を確保する大胆な改革の資金に充てようと考えたのです。
Q2:
史上最高額ということですが、ムハンマド皇太子の狙い通りと言えるのでしょうか。
A2:
100%満足ではないと思います。ムハンマド皇太子は、3年前、サウジアラムコの株式を公開する意向を表明した際、時価総額2兆ドルを目指すと豪語していましたが、実際には、1兆7000億ドル(日本円でおよそ184兆円)で、目標には届きませんでした。また、同時に海外の証券取引所にも上場するとしていましたが、いつになるか、めどが立っていません。
Q3:
思い通りにならなかったのは、なぜですか。
A3:
いくつか理由があります。▼まず、サウジアラビア政府自体のリスクです。イランと激しく対立し、地域全体が緊張しています。9月には、サウジアラムコの製油施設が何者かに攻撃され、一時、生産停止に追い込まれました。また、去年10月、サウジアラビアの著名なジャーナリストが、トルコ国内の総領事館で殺害された事件では、ムハンマド皇太子自身の関与の疑いが取りざたされました。
▼また、最近、原油価格が低迷しており、石油産業の将来を不安視する見方も広がっています。
サウジアラムコは、今後も政府が筆頭株主です。経営の透明性に欠けると言う指摘もあり、東京を含む、海外の証券取引所にも上場されるのか、ムハンマド皇太子による経済改革が計画通り進むのか、当面、サウジアラビアから目が離せません。
(出川 展恒 解説委員)
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