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「どうなる?アメリカ対中『スマホ関税』」(ここに注目!)

髙橋 祐介  解説委員

アメリカのトランプ大統領は、中国製スマートフォンなどに対する関税の上乗せ措置を、今月15日に迫った期限に発動するでしょうか?髙橋解説委員です。

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Q1)
けさのイラストはトランプ大統領がスマホを見ながら運転している?
A1)
あら危ない!運転中の“ながらスマホ”は事故のもと。大統領も危険は承知のはずですが、ソリは今月15日の期限に向けてまっしぐら。このままコースを変えずに、中国との貿易交渉が「第1段階の合意」に至らなければ、アメリカは中国製スマートフォンなど、およそ1600億ドル相当の輸入品への関税を15%引き上げる構えです。そうなると両国の経済は大きな打撃を受けるでしょう。

Q2)
そうした事態は避けられない?
A2)
ひとまず関税発動は見合わせて、年内合意をめざすことは可能です。中国は、アメリカ産の大豆や豚肉など農産品の輸入を拡大し、譲歩する姿勢も見せています。ただ、中国は合意の条件として、すでに上乗せされた関税の一部撤廃を強く求めています。トランプ大統領は、そうした譲歩に応じるか、手の内を明かしません。

Q3)
すると米中の交渉妥結が来年にずれ込む可能性もある?
A3)
中国が旧暦で新年を迎える来月25日など、交渉に新たな期限を設けることも可能です。しかし、来年は交渉を取り巻く環境がさらに悪化しそうです。香港などの人権問題や、台湾の総統選挙、トランプ大統領が弾劾訴追されたら議会で弾劾裁判も始まります。米中双方が政治的に妥協できる余地は、ますます狭まるでしょう。

Q4)
米中両国は早期合意に漕ぎ着けられる?
A4)
自らの再選ばかりに気をとられがちな大統領に誰が前途の危険を報せるか?そんな期待を集めているのが、大統領の娘婿クシュナー上級顧問です。現に、カナダやメキシコとの貿易交渉をまとめたクシュナー氏は、このところ中国との交渉にも直接乗り出してきました。はたして米中の衝突コースは避けられるか?スマホを見ながら運転するのはやはり危険ですから厳禁です。

(髙橋 祐介 解説委員)


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