ウクライナのゼレンスキー大統領とロシアのプーチン大統領が9日パリで独仏首脳を交え、初めて会談します。石川解説委員です。
Q 4首脳どういう立ち位置でしょうか
A コメディアン出身のゼレンスキー大統領、仲介者のフランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相の介添えを受けていわば三銃士、老獪な枢機卿プーチン大統領と初めての顔合わせ。議題はウクライナ東部の紛争終結です。
東部ウクライナでは2014年親欧米の政権に対してロシア系住民が反旗を翻し、軍事紛争になりました。ロシアはクリミア併合に続いて、親ロシア派を支援し介入しました。停戦で合意したもの散発的戦闘は続き、国連のまとめでは1万3千人以上が死亡しています。ゼレンスキー大統領はこの春、平和を訴えて大統領に当選しただけに、最大の公約を実現できるか真価を問われる交渉です。ただ老獪なプーチン大統領は手元には年末に切れるガス供給契約などのカードもちらつかせています。
Q 4人が見ている文書は?
A 2015年に結んだ紛争終結への基本合意・ミンスク合意です。
ウクライナは親ロシア派の支配地域に特別な地位を与える、国際監視のもとウクライナ法に基づき選挙を行う、外国の軍は撤退する、国境管理はウクライナが行うなどの内容です。
ただそれぞれの項目をどのような順番で実施していくのか、自国領を明確にしたいウクライナと特別な地位の確立を先行させたいロシアとの思惑が絡み、合意は有名無実化していました。
Q 今回4か国首脳会談に至った理由は?
A プーチン大統領もこの合意を実施に移し、紛争から手を引き、欧米との対立を弱めたいと思っています。東部ウクライナでこの秋以降双方が戦力の引き離しを実施するなど双方は会談に向けて環境を整えてきました。独仏の首脳もロシアとの関係を一定程度正常化したいと考え、交渉を後押ししています。
Q 首脳会談の見通しは
A 厳しい交渉となるでしょう。双方が、捕虜の交換など紛争終結に向けた具体的な一歩を踏み出せるかどうかが焦点となります。ただロシアは、クリミア問題は討議せずとの立場です。ウクライナでも日曜日から野党が「妥協をするな」と大規模なデモを行っています。決裂もありうる状況で、5年続く紛争終結への道筋がつけられるのか、会談の行方は予断を許しません。
(石川 一洋 解説委員)
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