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「安全保障で投資規制 海外からWHY?」(ここに注目!)

神子田 章博  解説委員

外国人投資家が、日本の安全保障にとって重要な企業に出資する際の規制強化を盛り込んだ外国為替法の改正法が先週末参議院本会議で可決・成立しました。神子田解説委員です。

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Q 神子田さん、まずこの法律の改正案どういう内容なんでしょうか。

A 軍事転用が可能な製品をつくっていたり、原子力など安全保障上重要な事業を担う日本企業に、外国人が投資をする際、これまではその企業の株式の10%以上を取得する場合に限って政府への届け出を義務付けていたものを、1%以上取得する場合には届け出るように規制を強めるものです。海外の企業が安全保障関連企業の株式を保有することで経営上の発言権が強まることで、技術が流出したり、安全保障にかかわる事業部門が海外に譲渡されるといった事態を防ぐことが狙いです。

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Q 10%から1%にって、ずいぶん厳しくなるようですが、なぜそうした規制をとったのですか?

A 背景には米中対立があります。アメリカは、中国の軍事力の高度化に強い警戒心をいだくなか、投資の規制強化に一足早く踏み切っていて、日本も歩調をあわせた形です。ただ規制の対象となる業種が広範に及ぶことから、日本企業への投資がしづらくなるという批判や、企業経営にうるさく注文を付ける外国人投資家の口封じが狙いなのではないかといぶかる声がでているんです。

Q それに対して日本政府はどう対応しようとしているのでしょうか?

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A 海外の金融機関などが資産運用の目的で株式を保有するなど、安全保障上の懸念がないことが明らかな企業については、原則として事前の届け出を免除する方針を打ち出しました。さらに3000社を超える上場企業の事業の内容を所管官庁が一社ごとに調べ、どの企業が事前の届け出の対象となるのか、どの企業が免除となるのか、外国の人でも簡単にわかるようなリストをつくることにしています。海外の投資家というのは、一部上場企業の株式の取引の7割近くを占めています。今回の規制に理解が得られなければ、株価の下落ひいては、東京市場そのものの地盤沈下につながりかねないだけに、海外に向けての十分な説明を行ってもらいたいと思います。

(神子田 章博 解説委員)


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