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「米大統領選 ブルームバーグ氏の挑戦」(ここに注目!)

髙橋 祐介  解説委員

来年のアメリカ大統領選挙に向けて、世界有数の“大富豪”で知られるブルームバーグ前ニューヨーク市長が野党民主党から立候補を表明しました。髙橋解説委員です。

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Q1)
けさのイラストは空からブルームバーグ氏が降ってきた?
A1)
「トランプ再選を阻んでアメリカを建て直す」そう立候補の理由を語るのは、金融情報サービスで巨万の富を築きあげ「ウォール街にこの人あり」と言われたブルームバーグ氏。ニューヨーク市長を3期12年務めた実績を売り物に、途中参戦の仕方も大胆です。
いわば“パラシュート作戦”。来年2月の序盤の戦いは目もくれず、指名争いの最大の山場、予備選挙が集中する3月の「スーパーチューズデー」にいきなり飛び込もうというのです。

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Q2)
そんなことが可能なのですか?
A2)
たとえ民主党内に確固とした基盤がなくても「超」がつくお金持ちなら可能です。と言うのも、アメリカの選挙には「地上戦」と「空中戦」があると言われます。遊説や集会、戸別訪問で草の根から支持を集める「地上戦」。メディアを駆使して注目を集め、浮動票を一気にねらう「空中戦」。まず「地上戦」で組織をしっかり固め、政治献金を集め、蓄えた力を「空中戦」に投じるのがこれまでの定石です。ところが、推定資産6兆円のブルームバーグ氏は、いきなり「空中戦」。費用はすべて自腹で賄うと言うのです。

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Q3)
では民主党の候補者選びを勝ち抜く可能性はある?
A3)
常識で考えれば難しいでしょう。現在の民主党は左派が格差是正を訴えて台頭しているのに対して、ブルームバーグ氏は穏健な中道派。環境保護や銃規制の取り組みで一定の評価はありますが、過去には女性蔑視や人種差別とも受け取れる発言で物議を醸し、今回も「お金で選挙は買えない」と批判を浴びています。
ただ、いきなり空から降ってきて、従来の選挙戦の常識を覆した人物はいるのです。

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Q4)
もしやトランプ大統領?
A4)
その通り。長年互いを意識し合ってきたこの2人、“キャラ”もかぶります。ニューヨークのビジネスで成功したとする“大富豪”。共和党と民主党を行ったり来たりした経歴。そして強烈な個性。正攻法に囚われないブルームバーグ氏の挑戦を今最も警戒しているのは、実はトランプ大統領かも知れません。

(髙橋 祐介 解説委員)


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