日本と韓国の間で安全保障上の機密情報を共有する協定=GSOMIAは、今月23日に効力を失います。GSOMIAの行方について出石 直(いでいし・ただし)解説委員です。
Q1.時計の前で頭を悩ませているのはムン大統領ですね。
A1.ムン大統領はこの協定を延長しないと一度は決断しました。このままでは今月23日の午前零時に失効することになります。しかしこの期限を前に、アメリカ政府はエスパー国防長官など政府高官を次々に韓国に派遣し破棄の決定を見直すよう強く迫っているのです。今や、この問題は日本と韓国というよりは、アメリカと韓国の問題になっているのです。
Q2.アメリカはかなり強硬ですね。
A2.この協定は北朝鮮の弾道ミサイルの追跡など日米韓の連携にとって必要不可欠だ。この協定が失効して喜ぶのは北朝鮮や中国だというのです。今、トランプ政権は、韓国に対し在韓米軍の駐留経費の負担を大幅に増やすよう求めています。ムン政権としては、
ここでこれ以上アメリカの機嫌を損ねたくないところでしょう。
Q3.ムン大統領は考えを変えるのでしょうか?
A3.難しい判断になると思います。韓国政府は、日本が輸出管理の優遇対象国から韓国を除外した決定を見直せば、GSOMIAについても再検討する用意があるとしています。
しかし日本は、これは安全保障上の問題、日本の国内問題だとして韓国の要求を突っぱねています。そんな中で、韓国が前言を翻して協定を延長すれば、アメリカや日本の圧力に屈した、屈辱外交だとムン政権は国内から厳しい批判を受けるでしょう。
Q4.このままGSOMIAが失効してしまうと、どのような影響が予想されるでしょうか?
A4.一部には改善に向けた動きも出始めている日韓関係にとっては大きなマイナスになります。さらに米韓の同盟関係にも深刻な影響を与えることは確実です。きのうタイのバンコクでは日米韓の防衛担当大臣が会ってこの問題を協議しました。韓国のカン・ギョンファ外相も今週、アメリカを訪問してポンペイオ国務長官と会談することを検討しているようです。期限まできょうを入れて5日、韓国がどちらの道を選ぶのか、最後はムン・ジェイン大統領の判断にかかっています。
(出石 直 解説委員)
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