ヨーロッパ経済の先行きが今、心配されています。こうした中、ユーロ圏19か国の金融政策を担うヨーロッパ中央銀行のトップが今月、交代し、この難局を乗りきれるかが注目されています。櫻井解説委員です。
Q1 櫻井さん、これはバトンの受け渡し・・ならぬ、ステッキの受け渡しですか?
A1 はい。前任のドラギ総裁は大胆な政策で数々の危機を乗り越えたことで知られ、その手腕が「ドラギ・マジック」と呼ばれてきたことから、これにちなんだイラストにしてみました。
一方、引継ぎを受けたラガルド新総裁は、フランスの財務大臣やIMF・国際通貨基金のトップを歴任し、国際金融の世界でよく知られた存在です。
ただ、中央銀行での仕事は初めて。その新しい総裁に、待ったなし、の課題が待ち受けています。
Q2 どんな課題でしょうか?
A2 はい。ヨーロッパ経済の要であるドイツのGDP・国内総生産がきのう(14日)発表され、ことし7月から9月までの3か月間、ほぼゼロ成長だったことがわかりました。
欧州委員会も、ユーロ圏全体の成長率の見通しを先週、下方修正したばかりで、景気をどう支えていくか、正念場を迎えています。
米中貿易摩擦やイギリスのEU離脱による悪影響への懸念が残る中、ヨーロッパとアメリカの貿易摩擦、それに、ドイツの自動車メーカーの業績不振も、不安材料です。
Q3 となると、どのような対策があるんでしょうか?
A3 はい、実はそこが問題で、この先景気がさらに悪化しても、打てる手が極めて限られているんです。
というのも、ヨーロッパ中央銀行は、すでにドラギ総裁時代から、景気を支えるためのマイナス金利や大規模な金融緩和策といった異例ともいえる政策を続けていて、手元のカードをおおむね使いきってしまった状態です。
この点、実は、日本の置かれた状況にも、似ています。
そして、金融政策に限界がみえる以上、今後はドイツなど慎重な国にも働きかけ、各国の財政出動で、景気を支えてもらう必要に迫られる局面も、予想されます。
ラガルドさんといえば、現実的な目線と、粘り強い交渉力、政治力が持ち味ですが、各国との連携を円滑にすすめ、ヨーロッパ経済の下支え役を果たせるかが、注目されます。
(櫻井 玲子 解説委員)
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