建設現場でアスベストを吸い込み、肺の病気になった元作業員や遺族が国などに賠償を求めた裁判で、11日午後、福岡高等裁判所が判決を言い渡します。
Q:国と作業員の人たちが争っています。国の後ろの黒い丸はなんでしょうか。
A:いわゆる「建設アスベスト訴訟」は、全国で起こされていますが、弁護団によると、ここまで国は“10連敗”ということです。集団訴訟はすでに各地で、国の責任を認める判決が相次いでいるんです。
肺の病気を引き起こすアスベスト。今は全面的に禁止されていますが、かつて断熱材などに含まれていました。このため戦後、各地の建設現場で働いてきた人たちの中に、現在、肺がんや中皮腫で苦しむ人が少なくありません。
九州の裁判も1審は、防じんマスクの着用を義務付けることなど、国の対策が遅れた責任を認めています。
Q:2審ではどういう点が争われたのでしょうか。
A:裁判では建材を製造販売した企業の責任も争われています。
また、1審は元作業員のうち「一人親方」と言われる人たちの訴えが退けられました。これは、個人で仕事を請け負っているので「労働者」とは認められないという理由です。
しかし、弁護団は「同じ仕事をしているのに区別するのはおかしい」と救済を求めています。すでに東京高裁や大阪高裁は、相次いで「一人親方」に対しても国に賠償を命じていて、11日に判決が言い渡される福岡高裁の判断が注目されます。
一方で、アスベスト訴訟では、今、深刻な事態も起きています。
Q:それは何でしょうか。
A:訴えを起こした元作業員が肺の病気で次々と亡くなっているんです。弁護団によると、九州の裁判ではすでに8割以上が亡くなり、存命の方は元作業員の数でいうと28人中わずか5人になってしまったということです。
九州の裁判だけではなく、各地で今、元作業員が次々と亡くなっています。
Q:早く解決してほしいですね。
A:国の責任を認める司法判断は、すでに固まりつつあると言ってもいいでしょう。それでもさらに、裁判で争い続ければ、亡くなる人はさらに増えていきます。
国は救済策の検討を急いでほしいと思います。また、今回の判決も解決に向けた取り組みにつなげてほしいと思います。
(清永 聡 解説委員)
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