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「どうなる?憲法改正めぐる議論」(ここに注目!)

権藤 敏範  解説委員

イラスト解説・ここに注目です。きょうは衆議院の憲法審査会が開かれ、今の国会で初めて実質的な議論が行われます。権藤敏範(ごんどう・としのり)解説委員です。

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Q1)国民投票法の改正案が霞んでいますが?
A1)安倍総理が今の国会で成立を目指す改正案の先行きは、依然、不透明です。
憲法審査会での実質的な議論は、ほぼ半年振りですが、メンバーによる海外視察の報告などに留まり、改正案の審議は行われない見通しです。

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Q2)それはどうしてですか?
A2)改正案の先をめぐって、与野党の思惑が絡んでいるからです。
改正案は、国民投票の利便性を高めようと、一般の選挙と同じような投票の仕組みにするための、いわゆる手続法で、与野党ともに必要性は感じています。
ただ、自民党は、改正案を速やかに成立させた後、「自衛隊の明記」など4項目を提示し、憲法改正の中身の議論に入りたい。
これに対し、立憲民主党など野党側は、自民党ペースで進む事を警戒し、先に、国民投票の際のCM規制などを議論すべきだと主張して折り合っていないのです。
こうした思惑に加えて、与党にとっては状況がさらに厳しくなってきました。

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Q3)どうしてですか?
A3)閣僚が相次いで辞任したり、大学入学共通テストへの英語の民間試験の導入を延期したりしたことで、野党側が攻勢を強めているからです。
実際に、改正案は、去年の通常国会に提出されたものの、その時々の政治情勢などを受けて何度も先送りされてきました。関係者からは、「今回も繰り返されるのではないか」といった声も聞かれます。

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Q4)各党の思惑とか、駆け引きの材料にされているということでしょうか?
A4)任期中の憲法改正を目指す安倍総理としては、今国会で中身の議論に入りたいところで、自民党も、党幹部が「4項目以外でも議論したい」として野党側との接点を模索する動きが出てきました。
ただ、同じ与党の公明党が改憲に慎重なように、党によって立場は様々で、決して簡単ではありません。
そして、何より肝心な世論の盛り上がり。こうした政治の動きなどを国民がどう受け止めているのかも、今後の憲法議論の行方を左右するのではないでしょうか。

(権藤 敏範 解説委員)


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