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「相次ぐ閣僚辞任 責任と信頼」(ここに注目!)

伊藤 雅之  解説委員長

相次ぐ閣僚の辞任を受けた、これからの政治の課題ついて、伊藤雅之(いとう・まさゆき)解説委員に聞きます。

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Q1:国会の上の「信頼」に雲がかかっていますね。

A1:まさに、国民の信頼を回復するために、どう責任を果たすのかが、政治にとって大きな課題です。問題を整理しましょう。
菅原前経済産業大臣と河井前法務大臣は、いずれも「疑惑を指摘され、行政が停滞することを避けたい」という閣僚としての「行政運営上の責任」を辞任の理由にあげています。
指摘された事実関係を認めて、その責任を取った形ではありません。
ですから、国民の信頼を回復するには、当事者が、指摘された問題の経緯を説明し、異論があれば反論もして、国民の納得を得る「説明責任」を果たすべきだという点では、与野党は、一致しています。

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Q2:一方、安倍総理大臣の任命責任はどうでしょうか?

A2:その点で、与野党の考え方は大きく違っています。野党側は、1週間のうちに2人も閣僚が辞任したのは「異常事態」で「国民の信頼を失っている」として、任命した安倍総理大臣の「責任」を追及し、けじめをつけるよう求めています。
これに対して、政府・与党側は、襟を正して、政権が目指す政策の実現、この国会では、日米の新たな貿易協定の承認などの審議を着実に進めることで、「責任を果たし、信頼を回復していきたい」としています。
国会では、今週、衆参両院で予算委員会の集中審議が行われる予定です。ただ、臨時国会の会期は、残り1か月あまり。新たに大学入学共通テストの英語の民間試験の導入延期という問題も出てきました。多くの課題がある中、今後の国会の審議の進め方が、与野党のせめぎあいの焦点です。

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Q3:今回の閣僚辞任のきっかけは、「政治とカネ」をめぐる指摘でしたね?

A3:「政治とカネをめぐる問題」は、繰り返し指摘されてきました。国民の政治への信頼を失わせかねません。
個々の政治家の意識を高めるのはもちろんのこと、今のルールそのものを見直す必要はないのか。「政治とカネ」の問題と決別するために、何ができるのか、危機感を持って検討することも、政治家そして国会の責任ではないでしょうか。

(伊藤 雅之 解説委員)


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