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「どうする?北朝鮮漁船の取締り」(ここに注目!)

津屋 尚  解説委員

日本海では北朝鮮漁船による違法操業が後を絶たず、今月初めには、水産庁の取締船に漁船が衝突する事件もありました。北朝鮮漁船への取締りはどうすればいいのか。津屋解説委員です。

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Q:海の向こうで叫んでいるのは“あの人”ですね?

キム・ジョンウン委員長の大号令のもと、北朝鮮漁船は、日本のEEZ・排他的経済水域にある「大和堆(やまとたい)」周辺で根こそぎイカをとっていってしまい、日本の漁業は大打撃です。これに対して水産庁の取締船が放水をして退去させようとしたところ、船の衝突が起きました。

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Q:漁船の乗組員は全員、別の船で北朝鮮に帰ってしまったんですよね?

そうなんです。日本の漁業関係者からは「もっと強い対応を」といった声が、そして国会でも、「なぜ事情聴取もせずに帰してしまったのか」といった批判が出ています。

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Q:その場で捕まえることはできなかったんですか?

水産庁の船に乗っている取締りの担当者(漁業監督官)は一人だけだったので、大勢の北朝鮮乗組員を相手に、できることは限られていましたし、違法操業での立件も証拠が不十分で、難しい状況でした。また、衝突事件として立件しようにも、水産庁にはその権限がありません。権限を持つ海上保安庁であっても、国際法上、EEZを含む公海では、捜査権が及ぶのは自国の船だけでして、北朝鮮の船を直接検挙できないんです。

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Q:そうなると今後、北朝鮮漁船をどう取り締まればいいんですか?

この海域では、海上保安庁と水産庁の船が常時パトロールをし、北朝鮮漁船がいれば、退去するよう警告しています。そして、違法操業をする船に対しては、「拿捕(だほ)」という選択肢もあるにはあります。
ところが、「拿捕」しようとすれば、ただでさえ数が足りない巡視船などの
勢力を、そのために割かねばならず、その間、現場を守る対応に大きな支障が出てしまいます。現実的には、漁場に近づかせないようにする今の対応を粘り強く続けていくほかないというのが現状です。

(津屋 尚 解説委員)

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