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「どう防ぐ?交通事故の2倍 『転倒死』」(ここに注目!)

堀家 春野  解説委員

10月10日は語呂あわせで転倒予防の日とされています。去年(H30)転倒などが主な原因で亡くなった人は交通事故の2倍に上っています。どうすれば転倒を防ぐことができるのでしょうか。

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Q)。転倒で亡くなる人が交通事故の2倍とは驚きです。

A)。去年1年間に転倒や転落が主な原因で亡くなったのはおよそ1万人。これに対して、交通事故で亡くなった人はおよそ5000人。その開きは2倍です。転倒で亡くなった人のほとんどが65歳以上でした。ただこの数、実際はもっと多いのではないかと指摘されています。というのも1万人という数字には転倒し、頭や首を打って亡くなった人が多く含まれていると見られますが、転倒をきっかけに介護が必要になりその後死亡した人は含まれていないからなんです。

Q)。実際の被害はもっと大きいということなんですね。転倒につながるリスクにはどのようなものがあるのでしょうか。

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A)。日本転倒予防学会によりますと、転倒の主な原因は①年をとることによる身体機能の低下、②病気や薬の影響、③運動不足です。そして、転びやすい場所もあるというのです。
キーワードは「ぬかづけ」です。「ぬ」はぬれている場所、「か」は階段などの段差、そして「づけ」は片付けていない場所です。

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Q)。どうやって防げばいいんでしょうか。

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A)。体力づくりに加えて、例えば、段差がわかるように明るい色のテープを貼る、部屋に積み上げてある新聞や雑誌を片付けることも必要です。こうした転びにくい環境をつくる対策、広がっています。多くの高齢者が入院している病院では転倒の原因になりやすいスリッパをやめてかかとが固定されている履物に変える、ふらつく症状が出る睡眠薬を別の種類のものに変えるといった対策が行われています。そして、いま始まっているのが職場環境の見直しです。特にサービス業の現場では働く高齢者の増加に伴い、労災が増えているからなんです。転倒事故をきっかけに床を滑りにくい素材に変えたコンビニもあります。転倒は日常的に起きるからこそ深刻に捉えられていない面があると思います。ですが、リスクが極めて大きな問題だということを社会で共有し対策を進めていく必要があると思います。

(堀家 春野 解説委員)


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