来年アメリカ大統領選挙で政権奪還をめざす野党・民主党。その大統領候補選びのトップ争いに“異変”が生じているようです。髙橋解説委員です。
Q1)
けさのイラストは陸上競技?
A1)
インコースでトップを走ってきたバイデン前副大統領は、トランプ大統領の“ウクライナ疑惑”が自らにも跳ね返り“足踏み状態”。アウトコースのサンダース上院議員も健康問題で“一休み”。その間隙を突き、最近の世論調査でトップに躍り出たのが、エリザベス・ウォーレン上院議員です。
女性や若者を中心に支持率が急上昇。ウォーレン氏の集会は今、スマホの自撮り目当てに数時間待ちの長い行列も珍しくありません。
Q2)
なぜウォーレン氏が支持を集めている?
A2)
「私にはプランがある」そんなキャッチフレーズでウォーレン氏が訴えるのは、富裕層に対する課税強化や巨大なIT企業の解体、国民皆保険や地球温暖化対策、保護主義的な貿易政策、いずれも左派色がきわめて濃い政策です。いまの民主党は、既得権益に大胆に切り込む“プログレッシブ”=進歩派と呼ばれる左派の主張に勢いがあり、党内ではウォーレン氏に追い風が吹いているのです。
Q3)
では、トランプ大統領がめざす再選の行方にはどんな影響が出てきそう?
A3)
トランプ大統領は、中道派のバイデン氏よりも、左派のウォーレン氏の方が相手として組みしやすいと考えている節がうかがえます。民主党が左派の候補を選べば、共和党も保守派が結束を固める一方で、ビジネス重視の立場から中道票も取り込みやすくなるからです。
ただ、ハーバード大学の元教授で連邦破産法の権威だったウォーレン氏は、その経歴から恵まれたエリートに思われがちですが、実は意外な“庶民派”の素顔をアピールします。オクラホマ州の貧しい家庭に育ち、結婚や夫の転勤、出産や育児との両立に悩みながら地道にキャリアを重ね、格差是正と機会均等を訴えてきた姿勢が共感を呼んでいます。
はたしてウォーレン氏は混戦から一気に抜け出すか?トランプ時代のいま、民主党でも「まさか」と思われた事態は、もはや「まさか」ではないかも知れません。
(髙橋 祐介 解説委員)
この委員の記事一覧はこちら