アメリカのトランプ大統領は、北朝鮮が米朝実務協議の再開を控えて、弾道ミサイルを発射した事態にどのように対応するでしょうか?髙橋解説委員です。
Q1)
けさのイラストは、北朝鮮側がワゴンを押して近づいてきた?
A1)
北朝鮮の非核化に向けて米朝両国が実務協議を今週末にも再開すると発表した直後のことでした。まるでサラミを薄く切るように、これまで小出しの譲歩で制裁解除を求めてきた北朝鮮。今度は交渉のテーブルに何を載せてくるかと思いきや、ワゴンの下から飛び出したのは、弾道ミサイルだったのです。こうした事態は、米朝対話の局面を大きく変える可能性をはらんでいます。
Q2)
どうしてですか?
A2)
発射されたミサイルが、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイルだった可能性が高いからです。地上発射型に比べて発射の兆候を探知することが難しく、北朝鮮による核弾頭の小型化や潜水艦の航行技術が現在より格段に進歩すれば、アメリカ本土を狙うことも可能になります。これまで「短距離ミサイルであれば問題視しない」そう言ってきたトランプ大統領も、アメリカの国内政局で疑惑払拭の“洗い物”にかまけている場合ではなくなるのです。現に、北朝鮮との対話路線に否定的でトランプ政権を追われたボルトン前大統領補佐官は、ドアの外から「北朝鮮が自発的に非核化に応じる意思はない」と言い切ります。
Q3)
トランプ大統領は、こうした事態にどう臨むでしょうか?
A3)
今のところトランプ大統領は、今回のミサイル発射に沈黙を守っています。不用意な発言で同盟国の日本などと足並みの乱れを露呈すれば、北朝鮮に付け入る隙を与えかねない。そうした懸念もあって、いつになく慎重になっているのかも知れません。ただ、北朝鮮との実務協議を予定どおり開くなら「如何なる弾道ミサイル発射も国連安保理決議に違反し、断じて容認できない」そうした明確なメッセージを伝えることは最低限でも必要です。度重なる挑発行為に対話路線をどこまで維持するか?“トランプ流”の米朝協議はいま、岐路に差しかかろうとしています。
(髙橋祐介 解説委員)
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