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「アフガニスタン大統領選挙と和平の行方」(ここに注目!)

出川 展恒  解説委員

アフガニスタンでは、先週土曜日(28日)、世界が注目する大統領選挙が行われました。反政府武装勢力タリバンによるテロや攻撃で大勢の死傷者が出るなど、治安の回復が急務となっています。出川解説委員です。

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Q1:
アフガニスタンの大統領選挙、なぜ重要なのでしょうか。

A1:
国際テロ組織の一大拠点となったアフガニスタンを平和な国にできるかどうかが、かかっているからです。極端なイスラム主義を掲げるタリバンの政権が、2001年、アメリカ軍などの攻撃で倒されてから、4回目の大統領選挙です。
タリバンは、アフガニスタン政府の正統性を認めず、今回の選挙を妨害すると予告して、各地でテロや攻撃を行い、投票日だけでも100人以上が死傷しました。投票した人は、全有権者の6分の1にも満たなかったと見られます。

Q2:
命がけの選挙という感じですが、誰が大統領に選ばれそうですか。

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A2:
10人以上が立候補しましたが、現職のガニ大統領と、政権ナンバーツーのアブドラ行政長官の事実上の一騎打ちとなっています。実は、この2人、前回5年前の選挙でも大接戦で、決選投票となりました。開票に不正があったと揉めた末に、「挙国一致政権」をつくることで、権力を分け合いました。今回も、2人の決選投票に持ち込まれる可能性が高く、どちらが大統領の座に就くか、わかりません。そして、前回は、最初の投票から大統領就任まで、およそ半年もかかりました。

Q3:
治安の回復には、何が必要でしょうか。

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A3:
タリバンとの和平をどう実現させるかが焦点です。
アフガニスタンから軍を撤退させたいアメリカのトランプ政権は、タリバンと和平交渉を続け、1か月前、原則合意に至りました。ところが、そこで、タリバンのテロが起き、アメリカ軍の兵士が犠牲になったため、トランプ大統領は、和平交渉を中止しました。
アメリカとタリバンの和平交渉を再開させ、改めて合意できるか、これが、第1の関門です。そのうえで、新たに発足するアフガニスタン政府とタリバンが交渉し、和平の条件や、タリバンの処遇について決めるのが、第2の関門です。非常に険しく長い道のりです。国際社会も、アフガニスタンの安定に向けた国づくりを支援しなければ、この国は、国際テロの温床となり続けるでしょう。

(出川 展恒 解説委員)


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