非核化をめぐるアメリカと北朝鮮との実務者による協議が近く再開される見通しになりました。協議の焦点について出石 直(いでいし・ただし)解説委員です。
Q1、米朝協議という馬車の前に立ちふさがっている髭の男性はあの人ですよね?
A1、はい。トランプ大統領の補佐官を務めていたボルトン氏です。強硬派として知られるボルトン氏は「リビア方式」、つまり北朝鮮が核を完全に放棄した後に制裁の解除などの見返りを与えるべきだと主張していました。北朝鮮はこれに強く反発していたのですが、このボルトン氏が最近解任されたことで、北朝鮮の態度が大きく変わりました。先週(16日)には、北朝鮮外務省の担当局長が「数週間以内にまず実務者協議が再開される」という見通しを示しています。
Q2、米朝協議は長く中断していましたが、どこに注目していますか?
A2、まずはこの馬車を引く実務者による協議で一定の合意ができるのかどうか。4回目の首脳会談のお膳立てができるかどうかがに注目しています。これまで北朝鮮側の実務者には何の権限も与えられていませんでした。実務者のレベルである程度の合意を取りまとめ、これを首脳レベルに上げて最終的な合意に達するという交渉ができなかったのです。ハノイでの2回目の首脳会談が失敗に終わったのもこれが原因でした。近く開催されるであろう実務者レベルの協議で一定の方向性を打ち出せるかどうかが焦点になると思います。
Q3、トランプ大統領はさらにその先、キム委員長との首脳会談にも意欲を示しているようですね。
A3、停滞していた非核化協議が一気に進むのではとの「期待」もありますが、一方で「不安」もあります。
Q4、不安と言いますと?
A4、北朝鮮は最近短距離ミサイルの発射を繰り返しています。しかしトランプ大統領はこれを問題視しないと発言しています。短距離であっても弾道ミサイルの発射は明確な国連安保理決議違反、中距離のミサイルは日本列島を射程に収めています。日本時間のあす未明には日米の首脳会談が予定されています。アメリカに対してきちんと日本の立場を説明し、米朝協議が完全な非核化とは程遠い方向に進んでいかないようクギを刺しておくする必要があると思います。
(出石 直 解説委員)
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