南太平洋で台湾と断交する国が相次ぎ、中国の影響力が増しています。
Q1.中国と台湾の外交戦ですね。
南太平洋の陣取り合戦、白が中国と国交を結んでいる国、黒がこれまで台湾と外交関係のあった国ですが、中国は経済援助と引き換えに台湾と断交して中国と国交を結ぶよう働きかけてきました。その結果、今月16日にソロモン諸島が台湾と断交したのに続いて、20日にはキリバスも外交関係断絶に踏み切りました。台湾の孤立化をもくろむ中国は、建国70周年を迎える来月1日までの国交樹立を迫ったのです。これで南太平洋の14か国中、台湾と外交関係を維持するのは4か国まで減り、蔡英文総統には大きな痛手です。
ソロモン諸島は、ガダルカナル島をはじめ1000近い島と環礁からなる国で、太平洋戦争初期の1942年、日本軍が占領し、アメリカ軍との激戦の地となったことでも知られていますよね。この地域での中国の影響力が増すことにアメリカやオーストラリアは懸念を強めています。
Q.中国と台湾の争いだけではないのですね?
中国は南太平洋でも一帯一路構想を進め、経済的な結びつきを強めるだけでなく安全保障面でも取り込もうとしています。サモアやバヌアツなどでは中国による港湾の整備が進められ、いずれ中国の軍事拠点になるのではないかとアメリカは神経をとがらせています。台湾を後押しするアメリカは中国側についたソロモン諸島への援助の見直しを検討するなど反発を強めています。
Q.米中の覇権争いのはざまにあるのですね。
小さな島国が生き残るためには、覇権争いに乗じて双方から援助を引き出そうというしたたかな戦略も必要です。また、南太平洋は、日本にとっても重要な地域です。歴史的な関係が深く、豊かな漁場であるだけでなく、オーストラリアから石炭や鉄鉱石を運ぶシーレーン・海上交通路に位置するからです。
日本政府は1997年から3年に1度、島しょ国サミットを開いて関係強化に努めてきましたが、莫大な資金を武器とする中国に圧倒されているのが現実です。「自由で開かれたインド太平洋戦略」のもとアメリカやオーストラリアと連携を深めながら、いかに日本の存在感を高めていくか問われています。
(二村 伸 解説委員)
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