イスラエルでは、17日、総選挙が行われます。
ネタニヤフ首相が、4月の議会選挙後、組閣に失敗したため、選挙をやり直すことになったものです。中東情勢への影響について、出川解説委員です。
Q1:
ネタニヤフ首相、切羽詰まった様子ですね。
A1:
はい。ネタニヤフ首相にとって、まさに、「崖っぷち」の選挙です。首相を続投できなくなった場合には、自らの汚職問題で、検察から起訴される可能性が高まると見られているからです。
ネタニヤフ首相が、4月の選挙で勝利宣言したものの、組閣に失敗したのは、連立政権内の内輪もめが原因です。極右政党を率いる元国防相のリーベルマン氏が、ユダヤ教の教えを厳格に守る人々の兵役の問題をめぐって、ユダヤ教の宗教政党と対立し、決裂したのです。
Q2:
ネタニヤフ首相の続投の可能性は、どうなんですか?
A2:
現時点では、何とも言えません。直前の世論調査では、ネタニヤフ首相の与党「リクード」と、軍の元参謀総長のガンツ氏が率いる野党連合の「青と白」が、ともに、予想獲得議席32前後で、ほぼ横並びです。議会の定数は120。どの政党も、単独で政権をつくることはできず、選挙後の連立協議で次の首相が決まります。カギを握りそうなのが、9議席前後をとると見られるリーベルマン氏の極右政党です。リーベルマン氏は、宗教政党を除外して、「リクード」と「青と白」を含めた、いわゆる「大連立」の可能性にも言及しています。
Q3:
今回の選挙、中東情勢への影響をどう見ますか?
A3:
すでに深刻な影響も出ています。1つは、パレスチナ問題です。ネタニヤフ首相は、求心力を回復しようと、ユダヤ人入植地など一部の占領地をイスラエルに併合すると公約しています。これが実行されれば、パレスチナとの和平は、息の根が止まるでしょう。
もう1つは、敵対するイランの問題です。ネタニヤフ首相は、選挙を前に、近隣諸国に拠点を置くイランの軍事組織に対し、軍事攻撃を繰り返しています。右傾化が進む国内世論を意識してのことですが、大規模な軍事衝突を招く危険性もあります。ネタニヤフ氏の続投か、それとも新たな首相の誕生か、選挙から目が離せません。
(出川 展恒 解説委員)
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