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「超タカ派の解任で米朝協議は?」(ここに注目!)

髙橋 祐介  解説委員

アメリカのトランプ大統領が超タカ派のボルトン補佐官を解任したことで、北朝鮮との米朝協議にはどんな影響が出てくるでしょうか?
髙橋解説委員です。

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Q1)
けさのイラストはタカ派のボルトン氏がホワイトハウスから飛んでいく?
A1)
ボルトン氏は「みずから辞任を申し出た」と言っていますが、安全保障担当の大統領補佐官の交代は、これで3回目。しかも超タカ派のボルトン氏は、アフガニスタンやイラン、ロシアや南米ベネズエラ、それに北朝鮮に対する政策でも、周囲と不協和音が絶えず、政権内でいわば“浮いた存在”になっていましたから「よく17か月間もったな」というのが率直な印象です。そもそも去年ボルトン氏がこの重要なポストに起用されたのは、政権を支える保守派の意向に沿って、イランとの核合意を離脱する一方、北朝鮮との史上初の首脳会談に向けて、圧力を強化する狙いもありました。このため、両国と対話を模索している今、ボルトン氏には気の毒ですが、大統領にとって「もはや用済み」ということなのでしょう。

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Q2)
トランプ政権の対北朝鮮政策に変化はありそう?
A2)
北朝鮮が求める制裁緩和に、アメリカがただちに応じる兆候はありません。ただ、北朝鮮が非核化を実現するまで「悪い行いには報酬を与えない」それが、ボルトン氏が貫いてきた原則でした。そのボルトン氏が去った今、北朝鮮は軍事挑発をくり返す一方で、今月下旬にも米朝の実務協議を再開することに意欲を見せています。このため、今回の人事は、協議進展への機運をさらに高めることになりそうです。しかし、それは日本にとって、必ずしも良い結果を生むとは限りません。

Q3)
どうしてですか?
A3)
トランプ大統領はいま、来年の再選で頭が一杯で、“眼に見える外交の成果”が喉から手が出るほど欲しい状態だからです。ボルトン氏のような“ぶれない超タカ派”がいなくなることで、そうした大統領の前のめりを抑えることはますます難しくなるでしょう。北朝鮮と安易な妥協に走ることなく非核化を実現できるのか?今後の米朝協議は、いっそう注意深く見ていく必要がありそうです。

(髙橋 祐介 解説委員)


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