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「パウエル議長が戦う相手は?」(ここに注目!)

神子田 章博  解説委員

米中経済摩擦にゆらぐアメリカ経済の最新の動向を示す雇用統計が今夜発表されます。

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Q FRBのパウエル議長、アメリカ経済と格闘しているようですね?

A はい。今週もトランプ政権が中国からの輸入品に対する新たな関税引き上げ措置を発動しましたが、貿易摩擦の激化が好調だった雇用にどれだけ影響を及ぼしているのか気になるところです。パウエル議長としてはこの統計を通じて景気の状況を見極めたうえで、金融政策の次の一手を考えていくことになります。ところで、石橋さん、来年の大河ドラマの主人公といえば?

Q 明智光秀ですよね

A 正解です。そして明智光秀といえば有名なセリフが「敵は本能寺にあり」ですが、パウエル議長の心境は、さしずめ「敵はホワイトハウスにあり」といったところではないでしょうか?

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Q ええ? あっ、ホワイトハウスから矢が放たれていますが、これは、どういうことでしょうか?

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A FRBは7月に景気の減速を未然に食い止めようと政策金利を0.25%引き下げましたが、トランプ大統領は、引き下げ幅が小さすぎると失望を表明。その後1%の大幅な引き下げを求めました。ところがパウエル議長が簡単にうんといわないとみるや、「FRBは何もしない」とか、あげくのはてに、「私の敵はパウエルなのか中国の習主席なのか」と二の矢三の矢を放っているのです。

Q トランプ大統領は、なぜそこまで大幅な引き下げにこだわるんですか?

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A 表向きは中国との貿易戦争に勝つためにアメリカ経済の強さを維持したいということですが、実際は、来年の大統領選挙にむけ、大幅な金融緩和で景気を浮上させたいということではないでしょうか。しかしパウエル議長としては、アメリカ経済は、一気に景気後退に陥る局面ではないとして、あくまで景気の状況に応じた金利の引き下げ幅を見極めようとしています。さらに、大統領の言うがままになれば、本来政治から独立すべき中央銀行の信認に傷をつけることになりますし、そもそも経済がおかしくなったのも、大統領が落としどころもないまま貿易戦争を始めたからではないかと言いたい心境かもしれません。今後もアメリカ経済と大統領を相手に、苦悩の政策運営が続きそうです。

(神子田 章博 解説委員)

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