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「共通テスト 消えない高校側の不安」(ここに注目!)

西川 龍一  解説委員

大学入試センター試験にかわり、2021年1月から始まる大学入学共通テストについて、高校側の不安の声がやまない状態が続いているということです。西川龍一解説委員です。
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Q1.イラストを見ると、英語の問題ですか?

A1.不安の最大の要因は、英語です。共通テストには、「読む、聞く、書く、話す」の4技能を測るため、民間の検定試験が導入されます。この試験は、共通テスト本番を前に受ける必要があり、期間は来年4月から12月、つまりあと7か月ほどで始まるわけです。ところがいまだに試験日程や会場がはっきりせず、どの試験をどう受ければよいのか、高校はこの絵のように明確な指導の手綱が引けない状況です。

Q2.どうしてそんなことになっているのですか?

A2.共通テストを実施する大学入試センターと検定試験を行う民間団体との間での協定の締結が遅れていることが原因です。本来、とっくに締結を終えているはずが、今月中にすべての団体と締結できるかも微妙な状況です。大学入試センターは、協定書の内容が多岐にわたり、詳細を詰めるのに時間がかかっていると言いますが、この間、参加を予定していた団体のうち、TOEICの事業者が、先月になって参加を取りやめました。こうした状況に、全国の高校の校長でつくる「全国高等学校長協会」が「まったく先が見通せないほどの混乱状態だ」として文部科学省に速やかな対応を求める要望を行いました。異例の事態です。
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Q3.文部科学省は、何か手を打っているのですか?

A3.不安の解消に向けて、おととい、ホームページ上に特設のサイトを開設しました。しかし、関係者が知りたい情報は、現状では十分とは言えません。一方で、協定については、実施主体である入試センターと民間団体の間の問題という立場です。
このままの状況が続くようなら実施を延期するか再検討して欲しいという声が高まるのではないかと話す高校関係者もいます。共通テストの実施を決めたのは文部科学省です。混乱を収め、受験生が不利益を被らないよう、主体的に課題解決に取り組む責任があります。


(西川 龍一 解説委員)


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