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「インドとパキスタン 緊張は緩和できるのか」(ここに注目!)

安間 英夫  解説委員

インドとパキスタンの間で、双方が領有権を争うカシミール地方をめぐって緊張が高まっています。
核保有国どうしの緊張を緩和することができるのでしょうか。
安間(あんま)解説委員です。

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Q)この問題で両国は、長年対立してきたと思うのですが、なぜ今、緊張が高まっているのでしょうか。
A)きっかけは、今月上旬、インド政府が新たに発表した措置でした。
カシミール地方は、インドとパキスタン、そして中国が接する山岳地帯で、3つの国がそれぞれ領有権を主張し、実効支配しています。
インドの支配地域の州は、ヒンドゥー教徒が多数を占めるインドで唯一イスラム教徒が多数を占めています。
特別な地域だけにインド政府は70年あまり自治権を認め、これが地元住民の不満やパキスタンとの対立の緩和につながってきたのですが、今回、自治権を撤廃し、10月末には中央政府の直轄地として支配を強めることを決めたのです。

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Q)なぜ、インド政府はこうした動きに出たのですか。
A)大本には、モディ政権の与党がよりどころとするヒンドゥー至上主義、ヒンドゥー教徒を優先すべきだという考え方があります。
今回の措置は、ことし5月の総選挙で圧勝して再選したモディ首相の公約にもなっていました。
州外からヒンドゥー教徒の移住や土地の購入が可能となり、政府はインドをひとつに統合する重要なステップと位置づけています。
これに対してパキスタンは、自国の領土に対する実効支配の強化の動きであり、同じイスラム教徒が危険にさらされるとして激しく反発しています。

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Q)インドとパキスタンはともに核保有国ですね。
A)そのことが国際社会の懸念を高めています。
両国の間では過去3度にわたって戦争となり、根深い対立によって1998年、核の保有につながりました。
衝突やテロが起きると、緊張が一気にエスカレートすることになりかねません。
先週から今週にかけて、国連安全保障理事会の協議、そしてアメリカのトランプ大統領が双方の首脳と電話会談する動きがありましたが、事態の打開にはつながっていません。
関係国、アメリカや中国、日本も含め、国際社会は双方に自制を求め、関与や圧力を強めていくことがいっそう重要となっています。

(安間 英夫 解説委員)

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