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「各国で検討すすむか デジタル通貨」(ここに注目!)

櫻井 玲子  解説委員

各国の中央銀行が、現金のかわりに、スマートフォンなどで支払いができる、「デジタル通貨」を発行したらどうか?という議論が注目されています。
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Q1 デジタル通貨ってそもそもどういうものですか?
A1 はい。明確な定義はないのですが、現金と同じ価値をもつ電子上の通貨を一般的には指します。
今はキャッシュレス化がすすみ、民間企業が発行するICカード・電子マネーをお使いの方も多いですよね。
そこで、次は、各国の中央銀行がいっそ、紙幣や硬貨にかわる、デジタル通貨を発行すればいいのではないか?そうすればスマホで支払いや送金も直接できて便利なのでは?という議論が、海外を中心に、広がっているんです。
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Q2 どうして今、その議論が注目されているんですか?
A2 アメリカの巨大IT企業、フェイスブックがリブラというデジタル通貨・いわゆる仮想通貨を発行する計画を発表したことがきっかけの一つです。銀行口座がなくてもスマホがあれば簡単に送金ができる、といったメリットの一方で、民間企業が通貨を発行することに、セキュリティや情報管理の面で懸念も高まっています。
国際決済銀行の調べでは、キャッシュレス化がすすむ北欧や、スマホの普及が広がる途上国を含め、複数の中央銀行が、利便性の向上や脱税防止などを目的に、デジタル通貨を研究中です。特に中国人民銀行は、「デジタル通貨の研究の加速」を、ことし後半の重点方針に掲げています。またヨーロッパ中央銀行のラガルド次期総裁がデジタル通貨に前向きな発言をしていたことも専門家の関心を呼んでいます。
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Q3 日本でも、デジタル通貨を使う日が来るのでしょうか?
A3 日銀も研究はすすめていますが、国内では現金決済が主流であることや安全性の確保、民間銀行への影響などを理由に、近い将来の計画はないとしています。確かに、日本円のかわりとなるデジタル通貨を発行するとなると、簡単におカネを盗まれたり、データを勝手に使われたりしない仕組みが不可欠で、ハードルは高そうです。ただ、日銀はともかく、ほかの国がデジタル通貨を近い将来、導入する可能性は、あります。新しい形の通貨への模索が続く中、デジタル通貨の信頼性やその影響をどう評価するか、国際的な議論も必要になりそうです。
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(櫻井 玲子 解説委員)


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