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「『橋渡し世代』の語り部たち」(ここに注目!)

堀家 春野  解説委員

終戦から74年となり、戦争の記憶を次の世代にどう伝えていくのかが大きな課題になっています。
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Q)。戦争を体験した方から直接話をうかがう機会も減ってきています。
A)。戦争の記憶を風化させてはならないと国は3年前から戦後世代の語り部を育成しています。昭和館など3つの国の施設で、69人が研修を受けていて、月に1度、戦争体験者からの聞き取りや、話し方の訓練を重ねてきました。戦争体験者の記憶を次の世代につなげる橋渡し世代の語り部といえると思います。
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Q)。語り部になるのはどんな方たちなんでしょうか。
A)。20代から60代の男女で、学生や仕事をしている人、子育て中の人もいます。父親が東京大空襲の被害にあったという人や、好きなアイドルが特攻隊員を演じたことで興味を持ったという人もいました。語り部として話すテーマは自分で決めますが、戦中の子どもの日常についてや学徒出陣など内容は様々です。この秋以降、3年間の研修を終えた第一期生が、語り部として国の施設や小中学校などで活動する予定です。
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Q)。戦後世代の語り部だからこそ伝えられるものもあるんでしょうか。
A)。世代的に話を聞く側に近い人も多く、自分が疑問に思ったことを解きほぐしながら語ることができるのではないかと感じます。研修生の1人は、「戦争体験者から、決して忘れないでと言われたことを肝に銘じ子どもたちに記憶をつないでいきたい」と話していました。

Q)。橋渡しを継続することが大切ですね。
A)。ただ、国の語り部を育成する事業は再来年度(2021年度)で終了してしまうんです。戦後世代が記憶を語り継ぐ活動は、広島市や長崎市、東京・国立市などの自治体や、民間の団体でも行っています。こうした活動を広げるためにも、国は事業の評価をきちんと行い、語り部を育成する環境を整備していく必要があると思います。
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(堀家 春野 解説委員)


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