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「大丈夫? 農林水産物輸出の1兆円目標」(ここに注目!)

合瀬 宏毅  解説委員

政府が今年中の達成を目指してきた農林水産物の輸出1兆円目標ですが、その達成に黄色信号が点ってきました。合瀬(おおせ)解説委員です。
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Q 超えなければならないバーは高そうですね
はい。先週、農林水産省が公表した、今年6月までの半年間の農林水産物の輸出額ですが、4400億円と、去年に比べ2.9%増にとどまったことが分かりました。農林水産物の輸出目標1兆円は7年前、農業の成長戦略として掲げてきた安倍政権の重要課題で、年々輸出額を伸ばしてきただけに、この結果は想定外です。
1兆円をクリアするためには、残り半年で5600億円近くと、去年に比べ17%以上増やさなければならず、その達成に黄色信号が点っている。
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Q.今回伸び率が低かったのはなぜですか?
 海外では日本食ブームを背景に、和牛や日本酒などは伸びています。ただ一方で、水産物やイチゴなどのフルーツが去年より減少している。水産物については、漁獲量減少で輸出に回す量が少なかったことや、中国への輸出の不振。そしてイチゴは主な輸出先である香港などで、他の国との競争が激しくなったことが原因と農林水産省ではみている。
このため今後は、国内や海外で商談会を増やしたり、海外での見本市への出品を増やして、輸出増につなげることにしている。
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Q.それで1兆円目標は達成できるのでしょうか?
問題は海外の景気動向です。農林水産物はアジア地域への輸出が多いのですが、輸出額2位の中国では米中経済摩擦で景気が減速気味ですし、5位の韓国では関係悪化を原因に、日本製品の不買運動が広がっています。
また日本国内でも、豚コレラの広がりによっては、今後豚肉製品も輸出しにくくなる可能性があります。政府としては、こうした逆風をはねのけて輸出を伸ばしていけるがかが鍵となる。
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Q.なかなか大変のようですね
農水産物輸出については、TPPなどの逆風の中でも、農業の可能性を示すものとして安倍政権はその実績を、強くアピールしてきました。しかも今年の目標1兆円はいわば通過点で、この実績をもとに2030年には5兆円を目指すとしている。
 政府としては、ここで足踏みは許されず、輸出がふるわない原因をもう一度、再点検し、輸出体制の立て直しが求められていると思います。

(合瀬 宏毅 解説委員)

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