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「どうする?労災の『高齢化』」(ここに注目!)

堀家 春野  解説委員

コンビニなどで働く人の安全を守るため、厚生労働省は有識者会議を立ち上げ対策の検討を始めます。背景には高齢者の労災が増えていることがあります。堀家春野解説委員です。

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Q)。いまコンビニなどで働くシニアの方、よく見かけますよね。

A)。そうですね。実は、働くシニアの増加に伴い労災も増えているんです。去年、労災で亡くなった人、そしてケガをして4日以上休んだ人の4人に1人、3万3000人余りは60歳以上だったんです。そのうちのおよそ4割は転倒事故でした。

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Q)。労災というと建設業や製造業で問題になっていたように思うのですが。

A)。かつてはそうでしたが、状況は変わりつつあるといっていいと思います。
前の年に比べて労災の増加率が大きかったのが、介護施設、それにコンビニやレストランなどのサービス業です。人手不足が深刻な職場でシニアの人が働き、労災が起きているんです。建設業などでは安全対策が進んできましたが、サービス業の現場ではこれまで比較的若い人が働いていたため、対策が進んでいなかった面もあります。ですので、厚生労働省の有識者会議ではサービス業の現場での対策が重点的に検討され、ガイドラインが策定される見通しです。

Q)。労災を防ぐためにはどのような対策が必要なんでしょうか。

A)。若いときに比べると身体機能は落ちていますので、リスクがあるということを職場で共有すること。そして意識して気をつけるだけでなく、労災が起きにくい環境を整えることが重要だと思います。例えば、最も多い転倒を防ぐには、「ぬ・か・づけ」が重要だと日本転倒予防学会は指摘します。

Q)。ぬかづけですか?

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A)。転びやすいのは、ぬれている場所、階段などの段差、片付けていない場所だというのです。あるコンビニでは転倒事故をきっかけに、水拭きしていた床を滑りにくい素材に変えるなどの対策を行っています。政府は70歳まで働き続けられる社会を目指しています。働く場所を広げるだけでなく高齢者が安心して働ける環境を整えることができるのか注目したいと思います。

(堀家 春野 解説委員)


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