アメリカとイランの対立で緊迫の度を加えるペルシャ湾情勢、この対立にイギリスも加わり、事態はいっそう複雑になっています。出川解説委員です。
Q1:
アメリカとイランの対立にイギリスも加わったというのはどういうことですか。
A1:
きっかけは、今月4日、地中海に向けて航行中のイランのタンカーが、イギリス当局に拿捕されたことです。EUの制裁を受けているシリアに原油を密輸しようとしたという理由ですが、イランはこれを否定し、アメリカがイギリスに拿捕を要請したためと見ています。
そして、今月19日、今度はイランが、ペルシャ湾の入口にあるホルムズ海峡で、イギリスのタンカーを拿捕しました。互いに相手のタンカーを拿捕し、非難しあっているのです。
Q2:
イギリスは、アメリカ側についたと言うことでしょうか。
A2:
確かに、EUからの離脱を決めたイギリスが、同盟国であるアメリカに寄り添う姿勢を見せたという側面もありますが、そう単純な話ではありません。
イギリスは、トランプ政権が一方的に離脱した「イラン核合意」は、中東地域の核の拡散を防ぐため不可欠だとして、フランスやドイツとともに、核合意を守りたいと考えています。そして、トランプ政権が、ペルシャ湾の航行の安全を守るためとして、各国に参加を求めている「有志連合」には参加せず、イギリス海軍がイギリスの船を護衛することになりました。また、当初検討したイランに対する制裁も見合わせています。
Q3:
トランプ政権の「有志連合」への参加については、各国とも対応に苦慮しているようですね。
A3:
はい。トランプ政権が主導する「有志連合」は、ペルシャ湾の安全を守るためというよりも、イランに対する圧力を強化する狙いがあるという見方があるからです。イランは、各国に対し、参加しないよう強く要請しており、ヨーロッパ諸国も、参加をためらっています。
日本政府は、「現時点で、自衛隊の参加は考えていない」と表明していますが、今後、財政的な負担を求められる可能性も否定できません。「有志連合」に与することで、伝統的な友好国であるイランを敵に回し、ペルシャ湾の軍事的緊張をかえって高めてしまうリスクもあるだけに、極めて慎重に判断することが必要だと思います。
(出川 展恒 解説委員)
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