ロシアと激しく対立してきたウクライナで議会選挙が行われ、元コメディアンの大統領率いる与党が単独で過半数を獲得して勝利しました。安間英夫解説委員です。
Q)大統領が船に乗ってテレビ画面から出ていますよね?
A)こちらがウクライナのゼレンスキー大統領です。
今のところ順風満帆に航海しています。
ことし5月に就任したゼレンスキー大統領を一躍有名にしたのが、人気テレビドラマでした。
普通の教師が大統領に上り詰めるというストーリーで、そのタイトルは「国民のしもべ」。政党の名前も同じ「国民のしもべ」です。
地元メディアによりますと、424の議席のうち、単独で過半数の254議席を獲得し、かつてない圧勝でした。
新党ですのでこれまでの議席はゼロ。政治経験のない普通の人たちも多数当選しました。
ドラマで見たような光景が現実となっている。そんな錯覚すら覚えるほどです。
Q)課題はないのでしょうか。
A)最大の課題は、対立するロシアとの関係です。
これからゼレンスキー大統領が直面するのは、自国の一部を奪われている隣の大国と向き合わなければならない現実です。
ウクライナは5年前、南部のクリミアをロシアに併合されました。
東部では、親ロシア派との戦闘が今も散発的に続き、不安定な状況です。
ゼレンスキー大統領は、欧米との関係を重視しながら、ロシアとの対話も模索する姿勢を掲げ、支持を集めてきました。
就任後まず訪問したのはヨーロッパですが、プーチン大統領とも今月初めて電話で会談し、互いに拘束している兵士らの解放などで協議していくことで一致しました。
Q)ロシアはどう臨んでくるのでしょうか。
A)対話は拒まない方針です。
ただ、プーチン大統領はクリミアについて「合法的にロシア領になった」としています。これはウクライナの最高指導者としては受け入れられるものではありません。
ロシアとの対話を再開すること自体は今回の選挙で国民の支持を受けたかたちですが、少しでも妥協するようなことがあれば、国内で「売国奴だ」として反発を受けるおそれがあり、ジレンマを抱えています。
ゼレンスキー大統領の今後の舵取り、なかなか容易ではありません。
(安間 英夫 解説委員)
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