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「1票の格差 全国で一斉提訴」(ここに注目!)

清永 聡  解説委員

いわゆる「1票の格差」の裁判。今回の参議院選挙でも、7月22日全国一斉に、各地の高等裁判所・高裁支部で提訴が行われました。今回はどのような点が争われるのでしょうか。
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Q:参議院と裁判所が相撲を取っています。でも、参議院の方がすごく大きいですね。
A:これで「およそ3倍」です。今回の1票の格差を大きさで表してみました。それでも、前回が最大3、08倍でしたから、ちょっとだけ、小さくなっています。参議院選挙の1票の格差訴訟で過去に最高裁は、3回前の5、00倍、前々回の4、77倍の格差で、いずれも憲法違反一歩手前の「違憲状態」でしたが、3、08倍の前回は「合憲」つまり憲法に違反しないという結論でした。
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Q:前回が「合憲」で、さらに格差が少なくなったということは、今回も同じ結論になるのでは、という声もありそうですが。
A:訴えは全国の高裁・高裁支部に起こされていますが、前回、各地の高裁判決は「違憲状態」が10件、「合憲」は6件でした。最高裁より厳しい判断を示した裁判所が多かったんです。
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選挙の無効を求める弁護士などのグループは「そもそも3倍もの格差はおかしい。平等であるべきだ」と主張しています。それと今回、もう1つ注目される点があります。
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Q:何でしょうか。

A:それは前回の最高裁判決の指摘です。当時、2つの県で1つの選挙区とする合区の導入などを盛り込んだ法律の附則に「次の選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得る」などと記されていました。前回最高裁は、判決文にこれを引用して、合憲と判断するに至った理由の1つにしていました。
ところが「次の選挙」である今回、定数を6増やすなどの見直しにとどまったことから、弁護士などのグループは「必ず・抜本的に見直すという約束はどうなった」と批判しているんです。
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Q:国会の格差是正の取り組みが問われるわけですね。
A:その一方で、合区となった、「鳥取と島根」、「徳島と高知」の4つの県を中心にこの合区の見直しを求める声も強くあります。
「1人1票」の原則を守りながら地域の声をどう適切に反映させていくか。難しい問題ですが、これは裁判の結論を待たず議論を急いでもらいたいと思います。

(清永 聡 解説委員)

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