「ハンセン病家族 残された2つの課題」(ここに注目!)
2019年07月12日 (金)
堀家 春野 解説委員
ハンセン病の患者に対する誤った隔離政策で、家族も被害を受けたと国の責任を認めた判決が確定します。今後は残された2つの課題をどう解決していくかが焦点です。
Q)。政府は控訴をしない決断をしましたが、山登りに例えるとまだ4合目までしか到達していないんですね。
A)。そうなんです。原告弁護団はゴールまでの道のりは長いと話します。1つ目の課題は、これから検討が始まる家族を救済する制度です。18年前、元患者本人に補償する法律が作られた際には、裁判の賠償額を基準にしました。ところが今回はそう簡単ではなさそうです。
Q)。どういうことですか。
A)。裁判では訴えが棄却された原告がいるほか、認められた原告の間でも賠償額に33万円から143万円と開きがあります。原告側は裁判を起こしていない家族も含め被害者全員に、一律に補償金を支払う制度を求めています。一方、政府側からも判決を基準にするだけでは不十分だという声が聞こえてきます。補償の対象とする家族の範囲をどこまで認めるのかなど、検討すべき点があるとしています。救済策の策定に向け、原告側と政府側で協議を行うこと。そしていずれは国会で議論することになりますので、長年ハンセン病問題に携わってきた超党派の議員懇談会でも検討を進めて、当事者の納得を得られる制度をつくる必要があると思います。
Q)。2つ目の課題は何でしょうか。
A)。社会全体で考えていかなければならないもので、ハンセン病への偏見・差別を無くしていくことです。裁判の原告561人のうち、名前を明かしているのはわずか7人で、ほとんどは匿名で参加しました。問題の根深さを物語っていると思います。家族がハンセン病という病気になったというだけで地域から排除され、進学や就職、結婚といった人生のあらゆる場面で差別される「人生被害」の重みを受け止めなければなりません。国の誤った隔離政策で被害を受けた人がいるということをこの機会に多く人が知って、誤った知識や思い込みを無くしていくことができるのか。私たちの社会のあり様が問われていると思います。
(堀家 春野 解説委員)
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